ペヤングソース焼きそばが街から消えた。もし、このままペヤングと歩んできた時間までもが永遠に失われてしまうとしたら、とても悲しい。 ペヤングに目覚めたのは1989年の夏で、そのとき僕は神奈川の片田舎にある古い県立高校の一年生だった。周りにいた多くの友人がそうであったように僕もカップラーメンが大好きだったのだけれど、ペヤングのあの四角いルックスだけはどう対峙すればいいのか解を見つけられずにいた。 カップラーメンとどう向き合えばいいのか。それは極めて個人的な嗜好の問題で、誰かにこうすればいい、ああしたほうがいいと教えられる種類のものじゃない。ただ、乱暴な言い方をするならば、ペヤングを食べたことがある人とない人、ペヤングを知っている人と知らない人に世界は二分されていたのだ。当時まだ存在していたベルリンの壁によって世界が東西に分けられていたように。 今だからいえることだが、僕はあれこれ迷わずにベルリ