※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。 和文教科書. 7之巻 宇治拾遺物語ぬきほ - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】 かり、彫《ゑ》り通して、火の炎の、顔に、当たらぬ様《やう》にして、其の折敷の穴より、鼻を差し出でゝ、提の湯に、差し入れて、良く茹《ゆ》でゝ、引き上げたれば、色は、濃き紫のいろなり。 それを、側様《そばさま》に臥せて、下に物を当てゝ、人に踏ますれば、粒立ちたる穴ごとに、煙の様《やう》なる、物出《い》づ。 それを、甚《いた》く踏めば、白き蟲の、穴ごとに、差し出づるを、毛抜きにて抜けば、四分ばかりなる、白き蟲を、穴ごとに、取り出だす。 其の跡は、穴だに、明きて見ゆ。 それを、また、同じ湯に入れて、さらめかし沸《わ》かすに、茹づれば、鼻小さく、萎《しぼ》み上がりて、只人《たゞびと》の、鼻の様《やう》に成りぬ。 また、二三日