大田区の東急池上線久が原駅近くの「アサヒヤ紙文具店」には、店主が四年がかりで完成させた「理想のノート」がある。顧客に意見を求めて試作を繰り返し、万年筆に相性の良い特別な紙を選んで、製本にもこだわったオリジナル商品「クイールノート」だ。 紙と文房具の専門店として、創業から八十年余の歴史を持つ。量販店の台頭などを背景に「幅広く品ぞろえした『町の文具屋さん』の役割は終わった」と店主の萩原康一さん(51)。万年筆やその関連商品に特化したこだわりを打ち出し、インターネットなどで商品の魅力を発信すると、全国から反響があった。 クイールノートには、万年筆で執筆する多くの作家に愛用されてきた浅草の老舗ブランド、満寿屋(ますや)のクリーム紙を使用。「書くためだけに作られた紙」とも評され、滑りすぎない適度な筆記感があり、にじみが少ないなどの特徴があるという。