では、どのような競争が望ましいのか? おそらくは、競争を否定するより、競争のベクトルを増やすことのほうが賢明だろう。 勉強に勝てなかった子どもが、運動会のときだけは優等生に勝てると思って頑張るということは昔からあったものだ。 勉強やスポーツや音楽といった数少ない競争では、クラスの中で、勝ちの体験ができる人間はやはり少数ということになってしまう。 ひとつでもいいから自分が光るものを探す たとえば、勉強にしても総合点で競争させるのでなく、科目ごとに順位を発表するというだけでも、勝てる人の数を増やせる。ついでに言うと、秀才と言われる人間でも、何でもできるわけではないという安心感を与える効果もあるかもしれない。実際、理系頭、文系頭というのは確実にあるようで、私も国語は惨憺(さんたん)たる成績だった。 スポーツにしても短距離走が速い人間と長距離走に強い人がいるようだし、球技や体力勝負など勝てるベクト