昔に中学校か何かで見た周期表を思い出してください。質量数が最も小さな安定同位体は水素1(1H)ですが、質量数が最も大きな安定同位体は何でしょうか? 「ビスマスです!」 いえいえ、ビスマスに安定同位体はありませんよ!? 未来を予測し、過去を懐古し、極微の世界を見通し、宇宙の最果てに光を当てる。想像の翼ではたどりつけないその先へ。手の届かない宇宙スケールから、わたしたちの住む地域スケールまで、そこにひそむサイエンスの話題にご招待。はじまりはそう、蒼鉛の別名を持った金属、ビスマスでした。 ビスマスは不安定元素!? ビスマスは安定元素ではありません。ほんの数年前に、実験で、はっきりとくつがえされました[1]。天然に産する唯一のビスマス同位体であるビスマス209(209Bi)でさえ、半減期2000京年で崩壊していくとのことです。様式は、陽子2個と中性子2個をまとめて放出するアルファ崩壊です。そのため