慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授 中村 伊知哉 25年ほど前。ニューメディア・ブームのころ、日本電信電話公社(サービス開始時はNTT)のINSにときめいた。それまでにないサービスを実現するものだった。高速ファクス、キャプテン、テレビ電話といった具体像を見せてくれた。それでも、技術先行の批判がつきまとい、「INS=いったい、何を、するの」と揶揄(やゆ)されていた。90年代初のマルチメディア・ブームも、パソコン通信や多チャンネル放送、携帯電話といった新しいサービスを実現するトレンドだととらえられていた。 これに対し、NGNは何か。ユーザーにとって何が実現されるものなのか。サービスが豊かになるのか。あるいは、爆発的なコストダウンがもたらされるのか。それが見えない。だから盛り上がらない。業界の内輪話の域を出ない。ニューメディアもマルチメディアも、業界だけでなく、役所も旗を振っていた。