二〇二三年七月、市川沙央さんの『ハンチバック』が芥川賞を受賞しました。市川さんには主人公と同じ重度の障害があり、作品の中でも授賞式でも「読書バリアフリー」をうったえましたので、ご存知の方も多いと思います。この「読書バリアフリー」とはどういうことなのでしょうか。バリアフリーと聞くと、歩道の段差をなくしたり、駅にエレベータを設置することを連想する人もいます。ところが様々な生きにくさを抱えている人がバリア、社会的障壁を取り除いてほしいと願うのはハード面だけではありません。読書をはじめ、情報へのアクセスに壁があれば、それをなくしてほしいと望む人はたくさんいます。 では、読書にはどんなバリアがあるのでしょうか。だれもが思いつくのは目が見えない、または見えにくい、視覚に障害のある人は活字本は読めないだろうということです。ほかにもいます。手が不自由な人は本のページをめくることができませんし、寝たきりの状