物質の表面にある原子は一つ一つ見えるが、物質の内部に交じっている特定の原子だけを見ることは不可能とされてきた。ところが東京大学の幾原雄一教授らはこのほど、電子顕微鏡を使って結晶内部の不純物原子を一つずつ見ることに成功した。その秘密は「物質を斜めから見る」という、とても単純に聞こえる方法にあるという。新素材づくりの大きな力になると期待される。 不純物の役割はとても重要だ。例えばセラミックスに微量の不純物を加えると、硬くなるなど新しい性質が現れる。セラミックスは小さな結晶の集まり。結晶と結晶の境界(界面)に不純物が挟まると、ピンのように結晶同士を結びつけて硬くなると考えられる。 どんな不純物をどれだけ入れれば、どんな性質が現れるのか−。理論的な計算は難しいため、いろいろな不純物を混ぜて試行錯誤で新素材を探すしかないのが現状。「界面の不純物が顕微鏡で見えれば、材料づくりの大きな情報になる」(幾原