マフラーをとり、注文し、番号札のついたスタンドを持ち、どこに座るか見回した。右手にパソコンで作業する学生、左手に30代のカップルが座っている、その間に座った。座ってぼーっとしても両隣の人たちに気を使わせるだろうと、カバンの中の文庫をまさぐった。とにかく、自分の空間を確保することだ。取り出した本は荘子の外篇である。 読み始めたが、となりから「・・・の言説は・・・」と聞こえてきて、固まった。その言葉を日常の会話で使うカップルは少なかろう。「・・・論破するには・・・」などとも言っている。 僕はと言えば、ことわざ「顰みに倣う*1」の典拠部分を読んで心の中で大爆笑していた*2。 何か真剣な議論をそのカップルがしていたようではなかったが、本で読むだけの言葉を次から次へと使っているのを聞くにつけ、ニヤリという腹黒い笑いがこみ上げてくるのだった。 しかも使っているのはおもに女性だった。言説というのは、日常