文学と科学の インタフェイス 第1回 オートマトンが怖い(1) 風間賢二 一九五九年にC・P・スノーは、『ふたつの文化と科学革命』という有名な講演を行って物議をかもしだしている。その講演でスノーは、「文科系の人間で熱力学の第二法則がどんなものであるかを言えるものがどれだけいるだろうか、それは理科系の人間にとってはシェイクスピアの有名な一節のようなものなのに」と述べたのだ。つまり、いまや文系と理系がふたつの極に派閥化しており、そのうち、互いの言ってることがわからなくなってしまうぞと警告したのである。 もちろん、そうしたスノーの言葉は、一九六〇年代から七〇年代にかけて登場したアメリカのポストモダン作家たち――トマス・ピンチョンやジョン・バース、ロバート・クーヴァー、ジョゼフ・マッケルロイ、ドン・デリーロなどの作品を一読すれば、年寄りの危惧にすぎなかったことは周知の事実。実際、そのあたりの事情は