厚生労働省は11日、厚生年金支給年齢の65歳への引き上げを4年前倒しする案を発表した。さらに年金支給年齢を70歳程度まで引き上げることを鋭意検討している。筆者はこれは大変素晴らしい案だと考えている。なぜなら年間100兆円にも達する日本の社会保障費の抑制は喫緊の課題であり、日本の財政問題とは要するに膨張する社会保障費をどうするか、という問題に尽きるからである。この解決策はふたつしかなく、それは税金や保険料などの負担を増やすか、年金などの給付を減らすか、である。支給年齢の引き上げは、給付を減らすことに相当するが、心理的、政治的には給付額を減らすよりはるかに容易であり、筆者は政府が行動経済学の知見を取り入れた賢明な政策判断をしたことを大変評価している。 日本の社会保障費の推移 出所: 「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」藤沢数希(ダイヤモンド社)、国立社会保障・人口問題研究所