著: 小塚舞子 想像以上にマイペースでほのぼのとしている「坂の多い」街 ……タッタッタッ。坂を下る私の足音が聴こえる。この音を感じたのは久しぶりかもしれない。いつもと同じ靴なのに、なんだか響きが違う。今度は心臓の音まで聴こえてきた。ドン、ドン、ドン。だんだん速くなっていく鼓動は心臓の場所を教えてくれる。ずっと前から息切れもしている。運動不足だ。私は久しぶりに、実家のある生駒市を歩いていた。 昔は毎日、生駒の坂道を下ったり、上ったりしていた。どんな坂道もへっちゃらだったけれど、クラスでいちばん背の低かった私は、大きなランドセルを背負ったまま坂道を駆け降りてよく転んでいた。あまりに急な坂道だったから、地べたと空を交互に見たような気がする。何とか起き上がると、擦りむいた膝は見ないようにしながら、半べそで家に帰っていた。 地形の起伏が大きいので坂道が多い。坂道ではない道はほとんどないのでは? とい
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