消費者を欺く食品偽装が次々と発覚する騒ぎとなった2013年だが、かつては詐欺行為ギリギリの誇大宣伝が平然と出回っていた大らかな(?)時代があった。1970年代後半から80年代前半にかけての映画宣伝は異常なまでの熱気をはらみ、奇天烈なキャッチコピーやポスターに釣られた若者たちが映画館へとぞろぞろと向かった。まるでハーメルンの笛吹きに操られているかのように。そんな過剰な映画宣伝の急先鋒を務めていたのが東宝東和だった。映画ジャーナリストの斉藤守彦氏が上梓した『映画宣伝ミラクルワールド 東和・ヘラルド・松竹富士 独立系配給会社黄金時代』(洋泉社)は東宝東和を中心に、ライバル関係にあったヘラルド、東宝東和の影響を強く受けた松竹富士といった独立系配給会社がメジャー系に負けじと、いやそれ以上に目立ちまくっていた、かつての映画業界を検証したノンフィクション本である。 70年代から80年代にかけて日本で劇場