宇野千代と聞いて、何を想起するだろうか。 艶やかな着物姿のハイカラでモダンなおばあちゃんを、であろうか(宇野千代は着物のデザイナー、プロデューサーでもあった)。あるいは、幾多の男性遍歴で名を馳せた女流作家としての彼女を、であろうか(五度の結婚歴があった。註)。もしくは、名作「おはん」の作者としてであろうか(「おはん」は、第五回野間文芸賞、第九回女流文学者賞を受賞した)。 もし、あなたが女性ならば、晩年のベストセラー「生きて行く私」を、たちどころに思い浮かべるのかもしれない。宇野千代という女性の放つオーラと生きざまに共鳴しながらの、ひそかなる羨望とともに。 (註・うち一人とは、入籍はしていなかったようだ。) 「私は去年八十四歳になって、始めてテレビに出た。それまでは、テレビに出るのが可厭(いや)であった」 八十四歳の自分の顔が、精巧なテレビカメラに堪えられるのか。何の抵抗もなくしゃべられるも