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第25回〈後篇〉へ 第24回へ / 連載第1回へ / TOPページへ / 第26回へ 第25回 とんかつ武士道〈前篇〉 とんかつ、と言えばロースかつです。「いや、ヒレかつのことも忘れてもらっては困る」と言う人もいるでしょうが、そういう人でもおそらく、とんかつと聞いて即、脳裏に浮かぶのはロースカツの姿なのではないでしょうか。 そのとんかつは、縦のラインで切断されています。カット数は様々ではありますが、概ね6切れが標準です。僕は常々、世の人々はとんかつひと切れひと切れを十把一絡じつぱひとからげ的に扱いすぎなのではないか、という微かな不満を抱いています。なぜならその6切れはそれぞれが少しずつ異なる魅力をたたえており、その差異をあたかも無かったことのように「とんかつ」の一言でまとめるのは、少し大雑把すぎるのではないかと思うからです。 とりあえず左端のひと切れをL1とします。ひとつ隣がL2、そしてL
『令和元年の人生ゲーム』 第2話 平成31年無気力な同期、転職していく親友、新入社員にも容赦のない上司。 大手町で”圧倒的成長”を遂げるはずだった私は…… 2019年4月、私は早稲田わせだ大学政治経済学部を卒業して、大手町おおてまちにある人材系最大手企業、パーソンズエージェントに新卒入社した。 就活生の間で「パーソンズ」の人気は非常に高かった。「実力主義が徹底していて年次に関係なくマネージャーや子会社社長に抜擢ばつてきされる」とか「30歳で年収1000万超えはザラ」とか、そんな景気の良い宣伝文句に煽られて、総合商社や広告代理店を蹴ってパーソンズに入る学生も多い。「パーソンズの内定取れた」と私がゼミで報告すると、みんなから「えーすご! バリキャリ女子じゃん」「人生勝ち確だな〜」と羨望せんぼうの声が飛び交った。 「新人賞目指して、1年目からアクセルべた踏みでバリュー出しまくってください!」 4
自分がどんどんワトソンと一体化して――スランプに抗い、最後に解き明かした謎とは? 森見登美彦ロングインタビュー 作家の書き出し Vol.29 〈取材・構成:瀧井朝世〉 ◆あのシャーロック・ホームズがスランプに――『シャーロック・ホームズの凱旋』、書籍化をお待ちしておりました。これはあの名探偵ホームズが、「ヴィクトリア朝京都」にいるというお話です。文芸誌『小説BOC』に連載していたものですよね。 森見 2016年に連載がスタートしたので、刊行まで7年かかったことになりますね。最初に「ヴィクトリア朝京都」という言葉を思いつき、面白くできそうだと。そこから、ヴィクトリア朝ならシャーロック・ホームズだなとアイデアが膨らんでいきました。その頃、自分がスランプっぽい感じだったので、じゃあホームズもスランプ中だという話にしちゃえ、みたいなノリで書き進めて。自分には絶対ミステリーが書けないと思っていたので
「令和元年の人生ゲーム」 第一話第一志望だった慶應に合格し、晴れて上京。 新生活への希望に胸を膨らませる僕を迎えたのは、 「元」高校生社長と、暗い目をした不気味な男だった―― 2016年の春。第一志望の慶けい應おうに合格して、僕は地元の徳島を離れて上京した。キャンパスは横浜市の日ひ吉よしだったし、新居は川崎市の新しん丸まる子こだったから「京」と言っていいのか分からないけど、とにかく僕は東とう横よこ線せんに乗って、テレビで見た通りに自由が丘に行って、どうせ買ったきりロクに使いもしないマグカップやランチョンマットを選んだりした。 大学に入りたての頃はみんな意識が高いもので、月曜の一限から小難しい名前の一般教養を取ったり、語学の授業でもわざわざ上級クラスを選択したりする。 僕もその一人だった。大学は遊ぶための場所じゃなくて、勉強をしたり、人脈を作ったり、学生のうちにしかできない経験をしたりするた
長篇『夏物語』は40か国以上で翻訳され、世界中に多くのファンを持つ川上未映子さん。 そんな川上さんの待望の最新作『黄色い家』は、自身初となるクライム・サスペンスです。親もとを出て「黄色い家」に集い、カード詐欺に加担する少女たち――彼女たちを通して伝えたかったものとは? 本作に込めた想いについて、存分に語っていただきました。 作家の書き出し Vol.23 〈インタビュー・構成:瀧井朝世〉◆「カネ」「家」「犯罪」、そして「カーニヴァル」——新作の『黄色い家』、夢中になって読み、胸が熱くなりました。これは新聞に連載された長篇ですね。 川上 ありがとうございます。そう言って頂けて、ほっとしました。新聞連載を始めるにあたって、最初になんとなく、女の人たちが疑似家族みたいに暮らしているイメージが浮かんだんです。そのコミュニティがどうやって成り立ち、どう変容していくのかを書きたいと思いました。 ——第一
新人賞W受賞の大型新人が放つ救済の物語はいかに生まれたのか? ――『わたしはあなたの涙になりたい』四季大雅インタビュー いま一冊のライトノベルがジャンルの枠を超えて話題を呼んでいる。二〇二二年七月の刊行以来、規格外のデビュー作として絶賛の声を集め、ライトノベルでは珍しい単巻完結の作品でありながら、『このライトノベルがすごい! 2023』で並みいる人気シリーズを押しのけて〈文庫部門3位〉〈総合新作部門1位〉を獲得。本作は、巨大な欠落を抱えた少年が歩む〝再生への旅路〟を情感豊かな筆致で描いた感動作であると同時に、「物語」という形式自体を小説の内側から真摯しんしに問い直す問題作でもある。 体が徐々に塩に変わってゆき、最終的には死に至る「塩化病」の母親を持つ小学三年生の三枝八雲さえぐさやくもは、音楽室から漏れ聞こえるピアノの音に誘われるように五十嵐揺月いがらしゆづきという少女と出会う。やがて母を喪
前へ / 最初へ戻る / TOPページへ戻る / 次へ 第10回 味の素ラプソディ 「味の素」の話をしようとしています。よく見ると実に秀逸なネーミングですね。この調味料が目指すところをズバリ言い切って、なおかつ抜群に親しみやすい。字面も洒落しやれてる。ただ、味の素は固有の商品名なので、この種の調味料全般を指すのには不適切とされています。それで一時期は「化学調味料」あるいは略して「化調」という呼び名も普及しましたが、これは語感的にマイナスイメージが強いということで、「うま味調味料」と言い換えることが推奨されるようになりました。なんだかまだるっこしい呼び名ですね。「味の素」からはずいぶん遠いところに来てしまいました。 というわけで、ここでは「MSG」という英語を勝手に採用して話を進めようと思います。うま味調味料なんて贅沢な名だね、今からお前の名前はMSGだよ……というわけでもないのですが、これ
初長編小説、そして初単行本となる『蝶と帝国』をこの度上梓される南木義隆さんの長編デビュー記念エッセイをお届けします。南木さんがデビューにあたって大事にされたのはあくまで「百合」を書くことでした。 百合小説であるだけで売れないとされる中で、それでも自分の信念を貫いた南木さんを支えたものとは――。 二〇一五年、二十三歳の僕はある小説講座を受講していて、淡く日が差す五月の午後に、ちょっとした浮遊感を覚えつつ日本近代文学館へ向かっていた。小説家志望の青年にとって、理想の一つである作家を前にすることは、些かの緊張と、高揚とが入り混じっていた。その頃に僕が書いた小説は短編が十数本に、長編が一本。ほとんどが同人誌に寄せて書いたものだが、幾つかは新人賞にも送った。創元SF短編賞に三度送っていずれも一次選考落ち。ハヤカワSFコンテストに当時唯一書き上げられた長編を送って二次選考落ちが最高成績。 講師の津原泰
女性たちが日々の生活の中で「あれ?」と問題に思うこと、その違和感を自分の内から外に発することがフェミニズムの第一歩。Twitterでつぶやくような小さな行為もそう。その一歩を踏み出すためにはどうしたらいい? そのヒントを見つけてもらうための本『フェミニズムってなんですか?』について、津田塾大学・木村朗子さんにレビューしていただきました。 *註:6/21(火)正午に公開した本書評のトランスジェンダーの記述に対し批判が寄せられました。ご批判を真摯に受け止め、著者・編集者で相談の上、改稿し、再度本文を公開いたします。 清水晶子しみずあきこさんの待望のフェミニズム本だ。研究者であれば学術論文を書くのが本領だろうが、しかし学術論文というのはすでにある程度、問題意識を共有した人に向けて書かれるもので門外漢には少し難しいのである。さらにいえば学術論文というものには、論に固有の理路があって、個人の見解を縷
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