サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
買ってよかったもの
kinoshitakazuo.hatenablog.com
ちょうど二十歳になる直前のぎりぎりのところで、私は、ドストエフスキーの最後の長編小説群を『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』の順 ── これは書かれた順・制作順でもあります ── で読み、この体験はそれから四半世紀を過ぎようとするいまもなお太く強く尾を引いています(この順で読んだのには、コリン・ウィルソンの『アウトサイダー』の影響があるだろうと思います。『悪霊』の次に書かれた『未成年』はいまだに読んでいないんです。それはともかく、「いまもなお太く強く尾をひいてい」ることがすべてよいなんてふうには私は考えてはいません。よくなかったこともある。それでもそうなっちゃったんですよね)。 ドストエフスキーは死ぬまで上昇しつづけた稀有な作家 ── ほとんどの作家はやはりそれぞれの生前のある時期にピークを迎えてしまい、その後はどうしても下降してしまうんです ── だと私は思っていて、私
(ポール・ヴァレリー 清水徹訳 岩波文庫) (一) この作品のことはずっと気にはしていて、だいぶ以前に福武文庫での『テスト氏』(粟津則雄訳 一九九〇年)を読みかけにしたままでした。途中で放り出してしまったんですね。で、こちら、新訳としての『ムッシュー・テスト』(清水徹訳 二〇〇四年)の出たことももちろん知っていました。二〇〇七年三月、この本を私は自分の勤める書店の棚から手に取って、いくらかを立ち読みしてみました。そうすると、やはりどうしても気になる、とても惹かれる ── この作品は必ず私自身とどこかでか・どういう形でか結んでいるだろう、自分はきっとこの作品を必要としているだろう、という ── 箇所があって、購入したんです。それで、読み進めるなかで、旧訳の『テスト氏』をこちらは自宅の本棚から引っぱり出してみると、「やはりどうしても気になる、とても惹かれる」といま私がいったちょうどその同じ箇所
(井上俊夫 岩波現代文庫) (三) 私のこの紹介のしかたに問題があるというのは、いろんな要素をごっちゃにしてしまっているということなんですね。井上さんの文章がそのようにたくさんの要素を含み込んでいるわけです。 そのたくさんの要素のうちのひとつを、また別の著者の著作(これもぜひ読んでください)から引用してみます。ここに登場する湯浅という医師がどこでどんなことをしてきたひとかということは読んでもらえばわかります。 七月、舞鶴に着き、汽車で品川に帰ってきた。一四年ぶりの帰郷。多数の迎えにもかかわらず、日本がこんなに復興している驚きとは別の、大きなショックを受けた。 迎えの人々のなかに、もと一緒に働いた軍医や看護婦もいた。敗戦後すぐ帰国していた、ある軍医はいった。 「湯浅さん、あんたなんで戦犯なんてことに。あの戦争は正しかったなんて、言い張ったんだろう。ごまかしゃいいのに」 「そうじゃないんだ。君
(井上俊夫 岩波現代文庫) (二) 私はいま自分のしゃべりかたがまちがっているのじゃないかと危惧しています。しかし、このままつづけましょう。 「刺突」という訓練が強制的に行われたということ。それは、ごくふつうのひとが──戦闘でもないのに──木にくくりつけられた人間を銃剣で突き殺していくという訓練なんです。井上さんの場合は、ひとりの中国人を多数の初年兵で順番に刺していくというものでした。 そのときのことを先の長谷さんはこんなふうに述懐しています。 「あの時は怖かったなあ。今から思うと可哀想なことをしたもんや。俺たちが銃剣で突き殺したあの若い中国兵の顔が、俺の従兄弟そっくりやったんや」 長谷が殺した相手の顔を覚えていたとは意外だった。私は血まみれになって死んだ相手の様子は覚えていても、顔まで覚えていなかった。 (『初めて人を殺す』井上俊夫 岩波現代文庫) 『蟻の兵隊』の奥村さんはこんなふうにい
(井上俊夫 岩波現代文庫) (一) この本のことは以前(二〇〇五年二月)に、私の勤める書店のホームページで紹介したことがあります。その文章で私は、一月十日に『神聖喜劇』大西巨人)を読み終えたことを書いています。さらに、翌十一日に講談社文芸文庫の新刊『五里霧』(大西巨人)が出て、それを購入したこと、同時に『戦争における「人殺し」の心理学』(デーヴ・グロスマン 安原和見訳 ちくま学芸文庫)──これは現時点(二〇〇六年八月)でもまだ読んでいません──を購入したことを書いています。で、書かなかったことですが、この後、(この本の奥付によれば一月十八日)にこの『初めて人を殺す』が発売になったんですね。で、私は三日後の二十一日にはこれを読み終えているんです。 それまでにも私は、先のホームページ上で、『聞き書き ある憲兵の記録』(朝日新聞山形支局 朝日文庫)や『戦争と罪責』(野田正彰 岩波書店)、あるいは
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『kinoshitakazuo.hatenablog.com』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く