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買ってよかったもの
q52464.hatenablog.com
駄弁の効能(小説読み方談義4) イーグルトンの『文学とは何か』を訳したのは大橋洋一であるが、その大橋洋一の編集による『現代批評理論のすべて』という現代の批評理論を通覧するために便利な書籍がある。この書籍自体が膨大な文献紹介書みたいなモノなのだけれども、更に巻末に入門書ガイドが記されており、このガイドに最初に紹介されているのが『文学とは何か』で、その次に紹介されているのが、この筒井康隆による『文学部唯野教授』である。筒井康隆の小説だと、まあなんとなく変化球だろうなという気がしたのだけど、大橋洋一が薦めるのなら、という感じで読んでみた。 この小説?はそれぞれの章が現代文学批評の各項目となっており、コメディ風味のドタバタ騒ぎの後に主人公唯野教授による文学講義が行われる。まず、一読してはっきり分かる事は、この文学講義の部分は完全にイーグルトンの『文学とは何か』のオマージュである。ははあ、成程、そう
ギリシア・ローマの神々の物語を詩と共に味わう 最近、ヘロドトスの『歴史』や『古事記』を読んでいると、この手の伝説の域に入っている様なお話がもっと読みたくなってきた。この類の物語の中ではホメロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』が最も古い部類に入るのだろうけれども、それらを読むその前にギリシアの神々の様々な小噺を仕入れておいた方が色々と読書が捗りそうな気がする。実際、『歴史』を読んでいる時にも、基本的なギリシアの伝説を忘れてしまっているが為にややピンと来ない処なんかが存在したのである。 ギリシアの神話や伝説をざーっと手軽に知るための書物として、子供の頃の記憶に依れば、岩波少年文庫のブルフィンチの『ギリシア・ローマ神話』(“The Age of Fable” 1855年)が非常に手頃だった記憶がある。これは何度も読んだ筈なのだが、もう完全に記憶から消えてしまっているので、まあ久々に読んでみる
古代神話を比較神話学的または民俗学的方法で読み解く本 前回は古事記の物語をまず最初に簡単に掴む為にお奨めの書籍の覚書を書いたが、今回は古事記に登場する日本の古代の神々とその神話の由来について一般向けに解説された書籍に関して覚書を残しておこうと思う。 『古事記』には200以上の神々と数多くの物語が収録されている。当たり前の話であるが、これらの神や物語が『古事記』に記された形や配列で古代から大和時代まで存在していた訳では無い。『古事記』が作成されるにあたって、巷に溢れていた神々やその神に纏わる逸話、そして、人々の語り継いで来た昔話の様な数々のお話が、『古事記』という壮大な物語の部品部品として使われたのである。実際にどのようにして様々な神話や伝承が、現在我々が知る形の『古事記』として編まれたのかを推測する為に様々な方法が存在するとは思うが、起源が同根とされる様々な世界各地の神話を比較するというの
電子書籍時代の現代語訳古事記 池澤夏樹=個人編集の日本文学全集が2014年から刊行され始めた。実は池澤氏の世界文学全集の方は以前にえいやっと自分への褒美の積りで全巻セットを購入したのであるが、個人的事情により手元にはなく、遠く離れた処で私を待っている。早く手に取って読んでみたいものだと思っている内に、日本文学全集も刊行が始まってしまったのである。始まってしまったと言ったって、まだまだ絶版には遠い訳でその内購入するかな、なーんて考えている内に、なんとまあ、この池澤夏樹=個人編集 日本文学全集が電子書籍で刊行され始めたのである(2017年3月から)。それも正に、私が『古事記』を再び読んでみたいな、などと思い始めたこのタイミングで、である。これは最早購入しない訳には行かない。と言う訳で、待望の池澤夏樹・現代語訳の『古事記』を読んでみた。 さて、『古事記』は当たり前の話であるが、非常に古い物語であ
近代社会からの漂流 最近、池澤夏樹の現代語訳『古事記』を読んでいる。前々から池澤夏樹=個人編集の日本文学全集を読みたいと思っていたのであるが、遂に電子書籍化が始まったのである。『古事記』の前書きの、池澤夏樹の語り口は優しく、柔らかく、文学への愛に満ち溢れている。ああ、この人の文章は心地良いなと感じながら、そう言えば今まで池澤夏樹の書いた小説は読んだ事が無かったな、と言う訳で、処女小説『夏の朝の成層圏』を読んでみた。 この『夏の朝の成層圏』は様々な要素が淡い彩りで混淆した不思議な小説である。印象に残った要素を覚書しておこうと思う。 漂流物と云うのはある種の異世界訪問譚である。この小説ではその異世界が、天国を思わせる南の島となっている。お話の設定ではマーシャル諸島の辺り、環礁が作る美しい熱帯の楽園といった趣、ビキニ環礁もこのマーシャル諸島の一環礁である。熱帯の島々には自然の熱量がある、文明の齎
誰もがみんな嘘吐き野郎 最近、江戸川乱歩の『悪人志願』を読んでいる。江戸川乱歩の随筆集というものは非常に面白くて、失礼ながら、氏のイマイチぱっとしない作よりも随分面白い。自作解説から様々な推理探偵小説界の雑感、日本の推理探偵小説同人の逸話、等、読み所が満載である。しかし、一つだけ非常に読んでいて困る処がある。それは何かというと、以前『幻影城』を読んでいた時にも経験したのであるが、乱歩先生は容赦なくネタバレを書き記すのである。ちょっとネタバレだとか仄めかすとかいう程度ではなく、しっかりと解説してしまう。これは中々困った話であって、その対象の作品が、既に読んでいるものであればまあ良いのだけれども、未読の作品であれば、読者としては非常な窮地に立たされる。親切な事に、『悪人志願』ではそれぞれの随筆やら作品解説らの初頭に「ネタバレ危険」の注意書きがある。それの御蔭で読者は難を逃れる事が可能になるので
独裁制と民主制の戦い:ペルシア戦争を巡る一大歴史叙述 歴史に関する書物は中々面白いものが沢山ある。私は子供の頃から歴史関係の小説はかなり好きであった。『三国志演義』に始まり、『水滸伝』(歴史物では無いか)、陳舜臣の『十八史略』、山岡壮八の『徳川家康』、司馬遼太郎の色々な小説等を結構読んだのを覚えている。勿論この辺りの物は創作の歴史小説であって、きちんとした史書では無いから作者の好みや演出が多分に介入している訳であるが、そうは言っても相当面白い。きちんとした歴史研究文献は勿論碌に読んだ事がないので、それらがどれくらい面白いのかは良く分からないけれども、それはそれできっと随分面白いだろうと思う。まあ、きちんとした歴史書と言っても、古代のものになれば創作の入った記録と純然たる事実の記録との境目を明確にする事は中々困難ではないかと想像する。 今回読んでみた、ヘロドトスの『歴史』はその古代の歴史書に
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