サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
CES 2025
www.newsweekjapan.jp/mutsuji
・ウクライナではイスラエルへの親近感が強いが、イスラエル政府はロシアとの関係を重視して支援をほとんどしていない。 ・ロシアによるウクライナ侵攻に実質的に中立の立場の方針は、イスラエル国民の多くから支持されている。 ・そこには「国際社会に安全保障を頼るべきではない」という考え方が色こく反映されているとみられる。 イスラエルの塩対応 一方が好意や共感を示しても、相手がこれにドライな反応しかみせないことは個人同士の間だけでなく、国際関係でもあることだ。 ガザ侵攻による人道危機をめぐり、各国でイスラエルの評判が悪くなるなか、ウクライナではイスラエルに好意的な人が7割近くに及ぶ。これはアメリカを凌ぐ水準だ。 ところが、イスラエルのウクライナに対する態度は、それに見合うほど好意的ではない。 例えば、イスラエルはアメリカの同盟国のなかで例外的に、ウクライナ侵攻後もロシアとの取引を継続し、対ロ経済制裁にも
UNRWA本部の地下にある「トンネル」を捜索するイスラエル兵(2024年2月8日) Dylan Martinez-REUTERS ・イスラエルはガザにあるUNRWA本部の地下にトンネルがあり、ハマスの司令部が置かれていたと発表した。 ・当事者の発表だけに正確性には留保が必要だが、仮に事実だったとしてもイスラエルが求める「UNRWA解体」にはリスクが大きすぎる。 ・さらに重要なことは、UNRWAに問題があったとしても、それがイスラエルの免責にはならないことである。 「トンネル」の衝撃 イスラエル軍は2月11日、ガザにあるUNRWA(国連パレスチナ難民救済機構)の建物の地下にハマスのトンネルがあったと発表した。 記者団に公開されたトンネルはコンクリート製で地下およそ18メートルと深く、距離は700メートルに及んだ。いくつもの部屋があり、トイレもあったという。 イスラエル軍はこれが「ハマスの司令
・ガザでの人道危機に世界的に批判が高まるなか、ウクライナでは「イスラエルに親近感をもつ」人が7割近くにのぼる。 ・これはイスラエル最大のスポンサーであるアメリカをも凌ぐ水準で、世界的にも例外に近い。 ・そこには「欧米的でありたい」渇望と「見捨てられる」焦燥があるとみられる。 目立つイスラエル支持の世論 キーウ国際社会学研究所(KIIS)が昨年12月にウクライナで行った世論調査によると、「イスラエルに親近感を持つ」という回答は69%にのぼった。これは世界的にみて例外ともいえる高さだ。 例えば、イスラエルの最大のスポンサーであるアメリカでは、従来イスラエル支持が強いが、それでも昨年11月のYouGovによる調査ではイスラエルへの親近感が36%にとどまった。 また、AP通信の1月の調査では、「イスラエルは行き過ぎ」という回答は50%にのぼった。 アメリカでさえそうなのだから、ガザでの深刻な人道危
ウクライナのゼレンスキー大統領と会談した岸田文雄首相(2023年3月21日、キーウ) paparazzza-Shutterstock ・2023年に日本政府が提供した資金のうち「あげた」のは10%程度で、政府歳出の0.2%ほどしかない。 ・外国に提供した資金の大半は貸付つまりローンで、相手国は利子をつけて日本に返済することになるため、少なくとも「バラまき」とは呼べない。 ・さらに、2023年の日本政府による資金提供を国別にみると、その上位5カ国には日本へのリターンが期待される国が多く、この意味でも単なる浪費といえない。 岸田政権を擁護するつもりはないが 物価上昇は続き、一方で多くの業種・職種ではそれに見合うほど給与が増えない。それでも増税論議は活発で、おまけに自民党の「パー券」問題の結末に多くの人は納得していない。 こうしたなかで岸田政権が海外への資金協力を増やすことには、SNSを中心に批
<中国が仲介した停戦合意を3日で破棄。「反・軍事政権」では民主派と一致しているアラカン軍だが、優先事項は「ミャンマーの民主化」よりも......> ・ミャンマーで続く内戦で中国は停戦合意を仲介したが、その3日後に武装組織「アラカン軍」は合意を破棄し、北西部の主要拠点を制圧したと宣言した。 ・中国の仲介を反故にしたアラカン軍は軍事政権と対決しているが、軍事政権の最大スポンサーである中国から支援を受けているといわれる。 ・つまり中国は「飼い犬に手を噛まれた」わけだが、それでもミャンマー北西部に事実上の独立政権が発足した場合には黙認せざるを得ないとみられる。 中国の仲介を無視した「北西部制圧」 ウクライナやガザの陰でスポットが当たりにくいが、ミャンマーはアジア最大の戦場と呼べる。 2021年2月のクーデタでアウン・サン・スー・チーら民主派が逮捕・投獄されて以来、民主派が事実上の亡命政権「国民統一
<事実に反する情報発信そのものを規制する法律のない日本。偽・誤情報の規制と表現の自由のバランスを保つ「難しさ」とは> ・世界を見渡すと、戦争、選挙、そして感染症を含む災害がフェイクニュース拡散の3大テーマともいえる。 ・ところが、日本では表現の自由とのかね合いから、フェイクニュース拡散そのものの取り締まりは慎重な対応が続いてきた。 ・規制強化に向けたグローバルな動きがあるなか、能登半島地震での経験は今後のフェイクニュース対策に重要な手掛かりを残すものといえる。 体系的な取り締まりは難しい 戦争、選挙、そして災害(新型コロナのような感染症もここに含めていいだろう)。これがフェイクニュースの最も出回りやすい三大テーマといえるが、能登半島地震直後の状況はそれを再確認させるものだった。 地震に関連するフェイクニュースがあまりに多くなったことを受け、総務省が1月2日、X(旧Twitter)、メタ(F
イスラエルとハマスの衝突の激化にともない、欧米ではムスリムだけでなくユダヤ人に対するヘイトクライムが急増している。 このうちユダヤ系に関しては、例えばアメリカのユダヤ系団体「名誉毀損反対同盟」によると10月7日からの1ヵ月間だけで、ヘイトメッセージ、嫌がらせ、器物損壊、襲撃などが832件にのぼった。これは前年の同じ時期と比べて315%の増加だった。 ヨーロッパでユダヤ人人口が最大のフランスでも同時期、1000件以上の反ユダヤヘイトが報告された。 パリのデモはこれらに抗議するものだった。 ただし、ここで注目すべきは、このデモに「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首が参加したことだった。 ルペン率いる国民連合は移民排斥を訴える、ヨーロッパを代表する極右政党として知られる。ユダヤ人コミュニティともこれまで摩擦が絶えなかったため、ルペンのデモ参加に関して他の政党が拒否反応をみせただけでなく、フランス・
<ロシアが兵士に覚醒剤を投与している疑惑は以前からあるが、ウクライナの民間人の薬物問題も戦争を機に深刻化している> ・ロシア軍事企業「ワグネル」兵士が銃で撃たれても倒れないなど、覚醒剤投与の疑惑が浮上している。 ・ワグネルは疑惑を否定しているが、戦場に送り出される兵士への麻薬支給はこれまでにもあった。 ・その一方で、ウクライナ国内の薬物問題も戦争で深刻化している。 「撃たれても倒れない」「味方の犠牲をまるで気にしていない」などの証言から、ロシアが覚醒剤を兵士に投与している疑惑が濃くなっている。 「ゾンビ映画みたいだ」 ウクライナ東部のドネツク州バフムトで4月3日、ロシア軍事企業「ワグネル」の部隊が市庁舎にロシア国旗を掲げ、制圧を宣言した。しかし、その後もバフムト西部ではウクライナ軍の抵抗が続いていると英BBCは報じている。 ロシアはウクライナ東部の制圧を重視し、バフムトはその主戦場になって
インセルによる無差別殺傷などの事件では逮捕される前に自殺する犯人が多い(写真はイメージです) Tero Vesalainen-shutterstock <イギリスは2021年にインセル(非自発的単身者、結果としての独身)を「数年以内に過激化する恐れのあるカテゴリー」に認定した。過激なインセル思想に基づく暴力への警戒感が世界的に高まっている> ・欧米では女性に憎悪を募らせた独身男性の暴力がヘイトクライムやテロと認定されている ・「結果としての」独身男性には特有の性格があることが調査で明らかになっている ・日本では統計上の処理により、この問題が「ない」ことにされている 結婚したくてもできない独身男性が女性への憎悪に染まりやすいことに、世界各国では警戒が高まっている。 英国で「過激化する恐れ」認定 イギリス内務省は2021年、インセルを「数年以内に過激化する恐れのあるカテゴリー」に認定した。 イ
<習近平自身が打ち出した「一帯一路」構想を巡って中国政府はジレンマに直面している。今年開催される第3回フォーラムへの参加国が減れば中国のメンツは傷つくが、かといって、中止する訳にもいかない> ・今年で10周年を迎える中国主導の経済圏「一帯一路」構想には、これまで多くのヨーロッパ諸国も参加してきた。 ・しかし、2019年以降、香港デモとコロナ禍をきっかけに、ヨーロッパにおける反中感情はかつてなく高まっている。 ・この状況下、中国政府は今年「一帯一路」フォーラムを開催する方針だが、首脳クラスの参加が減少する公算も高い。 ・ただし、中国は「一帯一路」フォーラムを開催しないわけにもいかないジレンマに直面している。 中国政府は「一帯一路」10周年を大々的にアピールしたくてもできないジレンマに直面している。 「一帯一路」10周年の国際会議 2023年は習近平国家主席が「一帯一路」構想の前身「シルクロー
総選挙敗北を受けて辞意表明するアンデション首相(2022年9月14日) Jessica Gow/TT News Agency via REUTERS <「スウェーデン人のためのスウェーデン」を標榜する民主党は、時間をかけて社会民主党に不満を抱く人の受け皿となった。総選挙での躍進には、ウクライナ侵攻が深く関係している> ・スウェーデンの総選挙で移民受け入れに反対する民族主義政党などが勝利した。 ・これまでスウェーデンは社会福祉の充実や環境保護、多文化共生の先進国とみなされ、社会民主党が長期政権を築いてきた。 ・この国の大転換の直接的な原因は、ウクライナ侵攻にあるとみられる。 「優等生」から自国第一へ スウェーデンはこれまで社会福祉のモデル国としても知られ、環境保護やジェンダー平等でも先進的とみなされてきた。そのスウェーデンで9月11日、総選挙が行われ、民族主義政党「スウェーデン民主党」が20
コロンボの大統領官邸そばで反政府抗議デモに参加する仏教僧(2022年4月15日) Navesh Chitrakar-REUTERS <経済危機を「コロナが原因」と主張し、自らの失策を認めないラージャパクサ政権に市民の怒りが爆発。長年与党を支持してきた仏教憎まで抗議デモに加わっている> ・南アジアのスリランカは経済危機に陥り、抗議デモの激化によって政治危機も深刻化している。 ・そこには長年、大統領などの要職を握ってきた一族支配の弊害がある。 ・海外からの資金に依存した場当たり的な経済運営が破綻するリスクは、スリランカだけのものではない。 国際的な海上輸送の一つの拠点でもあるスリランカは、混乱の広がりによって国家としての体裁を保てない「破綻国家」に近づいている。これは世界に広がる政治・経済のリスクの氷山の一角といえる。 コメ価格が6倍以上に ウクライナ戦争に注目が集まるなか、南アジアのスリラン
モスクワでプーチン大統領と会談したルペン国民連合党首(2017年3月24日) Sputnik/Mikhail Klimentyev/Kremlin via REUTERS <「ウクライナ侵攻でロシアへの見方は変わった」――決選投票を前に、「国民連合」党首マリーヌ・ルペンはプーチンとの深い関係をなかったことにしようと必死> ・移民、フェミニスト、LGBTに厳しいプーチンはこれまで、トランプをはじめ欧米の極右政治家と密接な関係を築いてきた。 ・しかし、ウクライナ侵攻をきっかけに反ロシア感情が各地で高まるなか、「友人」の多くはプーチンとの蜜月をなかったことにしようと必死である。 ・フランス大統領選挙の有力候補ルペンはその一人で、プーチンとの深い関係はフランス初の極右大統領の誕生を阻む一因となり得る。 欧米の「友人」たちはプーチンとの蜜月を否定するのに苦慮している。大統領選挙の最中にあるフランスで
ポーランドのメディカでウクライナ避難民の周辺を警護する警官(2022年3月7日) Fabrizio Bensch-REUTERS <国境や駅では人種差別的な対応が横行。「ロシアの非人道性」を強調するウクライナ政府にとって、自国の人道問題で批判されるのは避けたいところだが> ・ウクライナから逃れているのは白人ばかりでなく、アフリカや中東からの留学生や移民労働者も多く含まれる。 ・白人の避難民はほぼノーチェックで隣国に逃れているが、有色人種はウクライナ側でもEU側でも差別的待遇に直面している。 ・シリア難民危機をきっかけに欧米でエスカレートした外国人嫌悪は、ウクライナ戦争で浮き彫りになっている。 ウクライナで人道危機に直面しているのは白人ばかりではなく、むしろ有色人種ほど危険にさらされやすい。 「黒人だから国際列車に乗れない」 民間人殺害や化学兵器使用疑惑など、日々報じられるウクライナをめぐる
<ロシアで戦争を支持しない若者が国外脱出を図る一方、多くのウクライナ人も「国家のために戦う」ことを当たり前と考えているわけではない。この侵攻は古典的であると同時に、21世紀的な戦争でもある> ・ロシアでは強制的な徴兵への警戒感が広がっているが、ロシア軍は外国人のリクルートで兵員の不足を補っている。 ・一方のウクライナでも、とりわけ若年層に兵役への拒絶反応があり、「義勇兵」の徴募はその穴埋めともいえる。 ・「国家のため国民が戦う」が当たり前でなくなりつつあるなか、外国人に頼ることはむしろグローバルな潮流に沿ったものでもある。 「国家のため国民が戦う」。いわば当たり前だったこの考え方は、時代とともに変化している。ウクライナ侵攻は図らずもこれを浮き彫りにしたといえる。 ロシアの「良心的兵役拒否」 ウクライナ侵攻後、ロシア各地で反戦デモが広がっているが、その中心は若者で、年長者との年代ギャップが鮮
「目に見えない世界」を拒絶するプーチンには、シュルレアリスムを忌避したヒトラーと同じ傾向が見出せる(2月24日、スペイン・バルセロナ) Nacho Doce-REUTERS ・ロシアは日本アニメを最も規制している国の一つで、とりわけ異形の者や異世界を扱う作品が規制されやすい。 ・その最大の理由は、「目に見えない世界」に多くの人が惹きつけられることが、プーチン政権にとって大きな脅威になるからとみられる。 ・これまでの歴史を振り返ると、「目に見えない世界」を認めない強権的な権力者は、やがて行き詰まりやすい。 「デスノート」規制の背景 日本の漫画やアニメは世界中に普及しており、ロシアもその例外ではない。昨年11月、コロナ下でも日ロの大学生がクラウドファンディングで資金を集め、J -Anime Meetingをオンラインで開催するなど、文化交流の一翼を担っている。 その一方で、規制される作品もあり
・ウクライナ政府は世界に向けて、ロシアと戦う「義勇兵」を募っているが、各国政府はこれに慎重な姿勢を崩さない。 ・ウクライナには2014年以降、すでに「義勇兵」が数多く集まっていたが、戦争犯罪や人種差別といった問題が指摘されてきた。 ・各国政府には、「義勇兵」として実戦経験を積んだ者が帰国した場合、自国にとって逆にリスクになるという懸念があるとみられる。 ウクライナ政府が「義勇兵」を呼びかけているのに対して、どの国の政府もうやむやの反応が目立つ。そこには「自国民の安全」という表向きの理由以外にも、「義勇兵」が逆に自国の安全を脅かしかねないことへの懸念がある。 「義勇兵」呼びかけへの警戒 ロシアによる侵攻に対抗して、ウクライナ政府は外国から「義勇兵」をリクルートしている。ゼレンスキー大統領は「これは...民主主義に対する、基本的人権に対する...戦争の始まりである...世界を守るために戦おうと
プーチン大統領と握手するベラルーシのルカシェンコ大統領(2022年2月18日) Sputnik/Sergey Guneev/Kremlin via REUTERS ロシアとウクライナの停戦に向けた協議の第一ラウンドは、ベラルーシのホメリで行われた。また、アメリカ政府は「ベラルーシもウクライナに部隊を派遣する可能性がある」と報告している。ウクライナ侵攻でしばしば名前のあがるベラルーシとはどんな国で、なぜロシアに協力的なのか。これに関して以下では5点に絞って紹介しよう。 (1)「侵攻にかかわっていない」 ベラルーシはロシアの西隣で、ウクライナの北隣に位置する。この国は、ウクライナ侵攻が始まる前からロシアへの協力が目立ってきた。 例えば、昨年末から10万を超えるロシア軍がウクライナを取り囲むように展開していたが、そのうち約3万はベラルーシにいた。ウクライナでの緊張が高まっていた2月、ロシア軍はベ
ロシア軍の侵攻を警戒するウクライナ軍兵士(2022年2月10日) Vyacheslav Madiyevskyy-REUTERS ・「CIAやユダヤ人の陰謀と戦うために」ウクライナを目指す白人過激派は後を絶たない。 ・なかには欧米の現体制を打倒する「内戦」を目指し、実戦経験を積むためにウクライナに向かう者もいる。 ・ロシアが侵攻するかしないかにかかわらず、「ウクライナ帰り」が欧米でテロに向かうリスクは高まっている。 「ロシア軍の侵攻があるかないか」だけがウクライナ危機の脅威ではない。たとえロシア軍の侵攻がなくても、ウクライナが世界中にテロを輸出する「第二のシリア」になるリスクは、すでに現実のものになりつつあるからだ。 軍事侵攻だけがリスクではない 「事態が急速にとんでもないことになりかねない」。2月10日、バイデン大統領はこう警告して、アメリカ国民にすぐさまウクライナから退避するよう呼びかけ
ワクチン義務化に反対し、道路を封鎖するトラック(2月8日、オタワ) Blair Gable-REUTERS ・カナダの首都オタワの中心地を1000台近い大型トラックが1週間にわたって占拠している。 ・その多くはワクチン義務化に反対するトラック運転手やその関係者だが、これに極右が紛れ、デモを煽っている。 ・占拠の長期化にオタワ市は緊急事態を宣言したが、強硬手段は極右をさらに過激化させかねないため、カナダ政府の手腕が問われている。 カナダの首都オタワでは1月末から、その中心部が無数のトラックによって占拠されている。デモ隊の中心にいるのはワクチン接種の義務化に抗議するトラック運転手だが、その影にはカナダ政府に「テロ組織」に指定される極右団体の姿もある。 オタワの緊急事態宣言 オタワのワトソン市長は2月7日、緊急事態を宣言した。オタワ中心地が1週間にわたってトラックの大群に占拠され、交通が遮断され
対戦車砲を構えるウクライナ兵(2022年1月17日) Ukrainian Defence Ministry/Handout via REUTERS ・ウクライナでの欧米とロシアの対立の影には白人右翼のナワバリ争いがある。 ・ロシアとウクライナのそれぞれの右翼団体は、欧米諸国から外国人戦闘員をリクルートしている。 ・それぞれの陣営の白人右翼は欧米とロシアに使われる「手駒」だが、日陰者だった彼らにとってウクライナ危機はいわばヒノキ舞台ともいえる。 風雲急を告げるウクライナ情勢は欧米とロシアのナワバリ争いであると同時に、白人右翼同士のナワバリ争いでもある。自ら望んで戦地に集まってきた白人右翼にとって、ウクライナ危機は自らの存在を示す絶好の機会でもある。 ウクライナ危機のレッドライン 昨年10月以来、ウクライナでの緊張は一気にエスカレートしてきた。アメリカがウクライナにミサイルを配備したことに対し
GM初のEV専門工場を視察して試乗するバイデン大統領(2021年11月17日) Jonathan Ernst-REUTERS ・電気自動車が普及するにつれ、リチウムイオン電池の原料であるコバルトへの関心が高まっている。 ・しかし、世界一の産出国であるコンゴ民主共和国では、コバルト生産をめぐる児童労働などの人権侵害が深刻である。 ・こうした闇は、脱炭素への関心が高いが故に、国際的にはないものと扱われている。 いまや「脱炭素(カーボンニュートラル)」の一つの柱として世界的なトレンドになりつつある電気自動車(EV)は、地球には優しいかもしれないが、人間には必ずしも優しくない一面がある。 児童労働によって成り立つEV 小泉環境相(当時)が4月、「温室効果ガスの排出量を2030年までに13年度比で46%削減する」方針を打ち出したことは、その数値目標の出所をめぐる「おぼろげな」曖昧さもあって批判を招い
G20首脳会合に出席するためローマに集まった各国首脳(10月30日) Erin Schaff/Pool via REUTERS ・G20首脳会合で企業課税の引き上げが合意されたことは、多くの国で利害が一致した結果である。 ・これに対して、利害が一致せず、総論にとどまったテーマもあり、コロナワクチンの普及はその一つである。 ・バイデン政権はワクチン普及を促すため「特許放棄」をすでに打ち出しているが、実現への道は遠い。 衆議院選挙に日本の関心が集中している間も、世界は動き続けている。 ワクチン接種の格差 10月30日にイタリアのローマでG20首脳会合が開催され、企業に対する税率を最低15%に引き上げることが合意された。これは従来、各国が法人税を引き下げる「最底辺への競争」に突っ込んでいたことから大きく転換するものだ。 冷戦終結後、世界がグローバル化し、各国間の競争が激化するなかで「市場の論理」
定着しつつあった女子教育は再び抑圧されるのか(写真は2020年4月21日、コロナ禍に小麦粉の配給に並ぶアフガン女性) REUTERS/Stringer ・米軍の撤退と入れ違いに、タリバンはアフガニスタン全土で攻勢に出ている。 ・アフガン軍がこれを食い止めることはほぼ不可能で、タリバンは遅かれ早かれ政権を獲得するとみられる。 ・その場合、かつてのような厳格なイスラーム支配の復活への懸念もあるが、タリバンがより現実的な方針に転換する兆候もうかがえる。 米国の撤退に合わせて、タリバンはアフガニスタン全土で猛攻を続けている。タリバン支配が復活すれば、かつてのように女の子が教育を受ける権利を制限されるのだろうか。 「名誉ある撤退」の影で バイデン大統領は10日、「アフガニスタン撤退を決めたことを後悔していない」と発言した。昨年3月のタリバンとの合意に沿って、米軍や北大西洋条約機構(NATO)加盟国の
タリバンに備えるアフガン軍を支援する元ムジャヒディン(2021年7月10日、ヘラート州) Jalil Ahmad-REUTERS ・米軍がアフガニスタンから撤退を進めるのと入れ違いに、中国はタリバンとの協力を深めている。 ・そこには「一帯一路」に基づく経済的利益、ウイグル締め付けの強化、そして大国イメージの強化という3つの目的が見出せる。 ・ただし、「火中の栗」を拾おうとする中国には大きなリスクもある。 米国が撤退を進めるアフガニスタンに、入れ違いのように中国がアプローチを強めることには、「一帯一路」構想を進めるだけでなく、ウイグル問題への対応、さらに「米国を超える大国」のイメージ化という3つの目的があげられる。 タリバンを迎えた中国政府 コロナと五輪の報道で埋め尽くされた日本のメディアではほとんど報じられなかったが、中国政府の王毅外相は7月28日、アフガニスタンのイスラーム勢力タリバンの
2018年にオーストラリアで開催されたコモンウェルス・ゲームズに出場したジュリアス・セチトレコ選手 Next Media Uganda-YouTube ・ウガンダ選手の逃避行は偶発的なものではなく、アフリカ出身選手が国際大会で行方不明になる事件は近年多発している。 ・そこには国際大会への参加が貧しい国を離れるチャンスと見る見方がある。 ・ウガンダの場合、コロナ禍だけでなく、バッタの来襲や高齢の「独裁者」への絶望がこれに拍車をかけている。 五輪出場予定だったウガンダ人の失踪で日本は大騒ぎになったが、アフリカ人アスリートが海外で行方不明になることは珍しくない。生活の苦しさから国際大会を「国を出る」またとないチャンスとみるアスリートは多く、ウガンダはそれが目立つ国の一つだ。 レアケースではない逃避行 東京五輪に出場するため来日し、大阪の施設から行方不明になっていたウガンダ・チームのジュリアス・
自律型ロボット兵器の目的は自軍兵士の犠牲を減らし、人員不足を補うこと Al Jazeera English/YouTube ・アメリカではこれまで国家権力と距離を保ってきたシリコンバレーでも、AIの軍事利用に協力する動きが広がっている。 ・そこには中国などの台頭によって「AI分野でのアメリカの優位が脅かされている」という危機感がある。 ・軍事利用を前提とするAI開発レースの本格化は、戦争のあり方を大きく変える可能性を秘めている。 AIの発達は我々の生活を便利にする一方で、戦争を劇的に変えるポテンシャルも秘めており、AI開発はいまや核兵器のそれと同じく、大国間の軍拡レースの主な舞台になっている。 ロボット兵器から効率的な作戦まで G7サミットに先立つ2日前の6月10日、ホワイトハウスはAI研究のタスクフォースを新たに設置すると発表した。これは国をあげてAIの研究・開発を加速させるものだが、そ
・カナダで先住民族の子供が集められていた「強制収容所」の跡地が発見された。 ・これは先住民族を「同化」の名の下で迫害してきたカナダ史の暗部を浮き彫りにした。 ・ただし、自らの暗部に意識的に取り組む点で、カナダ政府は誠意ある態度を示してきたともいえる。 カナダで先住民族迫害の歴史が明らかになりつつあるが、それでも過去と正面から向き合おうとするだけ、カナダ政府はまだましともいえる。 小さな遺骨の集団 カナダ西部ブリティッシュコロンビア州で5月28日、かつて先住民族を集めて教育していた寄宿学校の跡地から215人分の子供の遺骨が発見された(日本では「先住民」と呼ばれやすいが、英語のindigenous peopleは「先住民族」が正しい訳)。 なかには3歳くらいの遺骨まであり、現地の先住民族の代表は「想像を絶する犠牲だ」と語っている。 この発見はカナダ史の暗部を象徴する。 カナダではイギリスの植民
・習近平国家主席は共産党幹部に、中国について国際的な理解を得られるよう、もっと努力することを指示した。 ・そこには、トラブルを抱えた外国政府を非難罵倒するこれまでのやり方が逆効果という見方が共産党内部にも広がっていることがある。 ・その一方で、「中国が理解されていない」という焦りは歴代政権が抱えてきたもので、習近平を待ち受けるハードルは高い。 中国の習近平主席は5月31日、共産党の最高意思決定機関、中央委員会政治局で、中国の国際的イメージの向上を厳命した。 国営の新華社通信によると、その主な内容は、 ・コミュニケーション手段(マスメディアやSNSなどを指すと思われる)を発達させ、中国に関する国際的な言説に、中国の声を届かせること。 ・中国共産党が中国人民の幸福のみを追求していることを海外に広く知らしめること。 ・中国の活動を説明できる、中国自身の言説やナラティブを育成すること。 ・信頼され
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く