書評(文献レビュー) ポピュリズム 【書評】フォルカー・ヴァイス『ドイツの新右翼』(新泉社、2019年)、『エリートたちの反撃』(新泉社、2020年) April 5, 2021 政治 歴史 ポピュリズム 長野 晃(慶應義塾大学法学部非常勤講師) AfD(「ドイツのための選択肢」)の躍進などでドイツの右翼運動が注目を集めてから、すでに数年が経過した。にもかかわらず、このような右翼運動の思想的基盤や、それを支える知識人ネットワークに関する情報は、日本ではいまだ限られている。そのような欠乏を埋めるべく、思想史研究者フォルカー・ヴァイス(Volker Weiß, 1972-)の二つの作品、『ドイツの新右翼』と『エリートたちの反撃』が近年相次いで邦訳された。以下、原著の公刊順に両作品の骨子を紹介した上で、ヴァイスの議論がポピュリズム研究にとって有する意義を論じてみたい。 「没落文学」の系譜 201