「ふうん、あした長野の須坂に行くんだ。 須坂も蕎麦どころだけど、あそこの蕎麦は パサパサしてて、私、あんまり好きじゃない。」 新潟県十日町市でのこと。 たまたま入った飲み屋の女の子のひとことです。 たしかに彼女にとって、信州の蕎麦は パサパサしてると感じるだろうなぁ、と思いました。 それほど、十日町の彼女たちがふだん食べている 蕎麦は“しっとり・つるつる”しているのです。 東急本店に向かう文化村通りにあるこの店は、その “しっとり・つるつる”の「へぎそば」を食べさせる店。 よく本に、“へぎそばは「へぎ」という平らな木の器に 入っているのが最大の特徴”などと書いてありますが それは外見上の違いのひとつにすぎません。 最大の特徴は、蕎麦につなぎとして布海苔(ふのり)が 練り込んであること。もともと布海苔は繊維産業で よく使われる海藻で、これを煮詰めて「糊」にします。 この布海苔に、もともと織物