文章は上手くなくて良い。上手いなら幸いだけれども、特別に上手くなくても書きたければ書いていいのだし、書くのはたのしい。それだからみんな作文するといいですよ。そういう主旨でものを書くワークショップがあった。あった、というのは文字通り主催が他の人だからで、私はただその部屋をてくてくと訪れて「下手でも書くのはたのしいです」と言う係だった。ブロガーという名称で呼ばれた、いわばしろうとの代表だ。 その部屋にはだから作文の好きな人たちがいて、主催側の、本を書いているような人とその手伝いのスタッフがいた。構えや思いこみを解いてなおかつ自分が読んでおもしろいものを書くためのしかけがほどこされたあとで、場は適度にほぐれ、人々はPCのキーボードをたたいたり、その場で書きあげた文章のプリントアウトと事前に書いてきたものを見比べて感心するなどしていた。 じゃあマキノさん、そこ座っててくださいね、と主催者は言った。