この15年ほどのスパイ・フィクションの歴史を振り返るとき、そこには時代ごとに人びとが背負った/背負いたがった「罪」を概観することができる。スパイが活躍した(すべきだった)事件や場所、時代の空気が告発され、観客たちに「罪」を見せつける。 なぜ世界はあの事件を止められなかったのか。 なぜ戦争は続くのか。 劇中のスパイたちは、観客の代わりにそうした時代の罪を背負い、罪を晴らす。 罪というのは難儀なものです。苦くもあり甘くもある。お前は罪を背負っている、という宣告は、人に重荷を背負わせると同時に、ある種の居場所を提供し、魅惑的な停滞のなかで安穏と過ごすことをも可能にする。 罪を劇中で代わりに晴らしてもらうなんて、あらためて考えてみれば実に現実逃避で甘ったれた行為であって、そうそう褒められたものではありません。 でも、人というものは、そういうフィクションを必要とする。 『007/スカイフォール』の監