東アジア共通の古典として、その名を喧伝される『三国志演義』。 日本人は関羽を、諸葛孔明を、そして『演義』をどのように理解したのか― 室町期の博士家・禅林における漢学、近世初期に舶載された漢籍・朝鮮本のなかに、『演義』および中国通俗小説の受容の端緒を探り、さらには、元禄期以降幕末期に至るまでの『演義』受容の諸相を明らかにする。テクストの受容のみならず、絵画資料や日本人の思想・歴史観にも言及し、さまざまな展開を見せた東アジア随一の通俗小説の受容過程と様相を描き出すことを試みた労作。 目次: プロローグ 凡例 第一部 博士家と禅林における中国通俗小説受容 第一章 中世禅林における『新刊全相平話前漢書続集』の受容―清家文庫所蔵『漢書抄』への引用をめぐって― 一 全相平話五種をめぐって 二 『漢書帝紀抄』における『前漢書平話続集』の引用について 三 中世禅林における漢書家の系譜 四 『漢書帝紀抄』に