小此木政夫慶応大学名誉教授(丸山博撮影) 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が昨年12月に「非常戒厳」を宣言した後、韓国政治は先を見通せない混乱に陥っている。こうした状況の背景には深刻化する政党間の対立とそれに伴う社会の分断があると指摘されており、国際的な世論調査でも韓国社会の党派対立は米国と同じくらい深刻だとされる。では、対立を深める韓国の「保守派」と「進歩派」を分けるものは何なのか、なぜ対立がここまで深刻になっているのか──。長年にわたって日本の韓国地域研究をリードしてきた小此木政夫慶応大名誉教授は、現代の対立状況の背景を19世紀後半の「朝鮮ナショナリズムの分裂と競合」にあるのではないかと指摘する。小此木氏の診断を2回に分けて紹介したい。 ── 今回の事態の背景には韓国社会の分極化、すなわち保守派と進歩派の対立の激化があると指摘されます。韓国における「保守派」と「進歩派」とは、いったい何