誰かの「やめた」ことに焦点を当てるシリーズ企画「わたしがやめたこと」。今回は絵はんこ作家、エッセイストなどとして活動しているあまのさくやさんにご寄稿いただきました。 あまのさんは、5年前に母を亡くした時から「家族の思い出が多い東京にいることの寂しさ」を感じていたそう。その後、仕事をきっかけに訪れた岩手県・紫波町に移住したことで、寂しさとの向き合い方に変化があったといいます。 *** 私は育った東京で、長らく暮らしていた。実家があり、友だちがいて、好きなお店もたくさんある東京で暮らすことが、私にとっての普通だった。 しかし40代を目前にして「この先の人生、ずっと東京で暮らし続けるのだろうか?」と疑問を持つようになった。東京での未来にあまり希望を持てなくなってしまったのは、母を亡くしてからだった。 2017年の夏、母のがんが発覚した。その頃のわが家は、前年に若年性認知症の診断が下りた父の面倒に