アリ(特にアルゼンチンアリ)についての本。昆虫好きな昆虫学者が書いた本なので、素人が読んでもわかりやすくて面白い。
筆者は昆虫が好きで、大学もその道に進んだ。にもかかかわらず、大学院修了後の就職先ではアリ用の殺虫剤の開発をしている。そうか、そういう進路になるのかと思った。
この件についてはあとがきでも触れられており、「自身で自問自答している」と書いてあった。そういえば、さかな君も魚を食べるし知識のお披露目で味もコメントしている(笑)。
それから、この本を読んでいくと、大学の勉強にかかるお金は授業料じゃないということがじんわりとわかった。筆者が学生時代から研究や研究補助のために国内外のあちこちに行っていることが想像できる。遠征地や頻度は専門や個人の能力にもよるだろうが、東大クラスになると学業のスケールも違うだろうと思った。
授業料以外にかかる持ち出しのお金も半端じゃない!本人は勉強に忙しくて、そうそうバイトもできなさそうだし。親は大変だと思った。
筆者の学歴は東大→東大院です。
筆者に感化されてアルゼンチンアリ面白い!と思ってしまったので、アルゼンチンアリの備忘を残します。
【アルゼンチンアリについて】
アルゼンチン原産のアリだが、世界各地で外来種としてスーパーコロニーを形成していることが知られており、問題になっている。本ではアメリカとヨーロッパの2つのスーパーコロニーについて書かれていた。
サンフランシスコからサンティエゴまで、巣を採集して研究室内に持ち帰り敵対性試験(*)を行ったところ、大部分の巣の間で敵対性が見られなかった。その間、なんと900㎞である。
(*):アルゼンチンアリはお互いの臭いで同じコロニー出身かどうかを判断する。同じ匂いがしたら同じコロニー出身なので戦わないが、そうでないと戦う。この性質を利用して採取したあり同志を敵対させて観察する。
敵対性が見られる巣(少数派)の周りでは、アルゼンチンアリの死体が山積み。スーパーコロニーを形成する多数派のアルゼンチンアリに攻撃されたとみられる。
ちなみに原産地のアルゼンチンでは、スーパーコロニーは数十から数百メートル程度のスケール。
つまり、アルゼンチンアリは侵入した土地でスーパーコロニーを巨大化させたことになる。災害や、天敵のほかに、別のコロニーのアルゼンチンアリ(敵)がいないことが理由と考えられる。
[ヨーロッパ]
イタリアからフランス、スペイン、ポルトガルにわたって、約6000㎞のスーパーコロニー。
敵対性は見られるものの弱い巣のアリがおり、解析したら遺伝的によく似ていて区別が難しいことが判明した。突然変異などにより派生した可能性がある。