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「偽装請負」←歴史に残る新書

2007-08-15 18:49:11 | 映画&本
偽装請負 朝日新書

大変よい本でした。
労働問題を取材した本のうちでも、歴史に残る力作になるでしょう。

ここには、わたしが働いた会社、身近なアルバイターたちが働いたり、働こうと検討したりしている会社の名前が出てきます。
それは同時に、インターネットで「ブラック企業」としてマークされている会社とも重なります。

大学中退をしたあと偽装請負で働いた人が、まるで大学を中退した因果として自殺するようになったと誤解されるような見出しのつけ方はどうかと思います。

そういった短所を含みながらも、この本は充実しています。
実際に、この記事がきっかけになって国会でも偽装請負について議論がなされました。
自分たちが苦労しているってことが、やっとほかの人たちにも伝わるようになった。自分たちが世の中からまったく無視されたり誤解されたりしてばかりで、マスコミも信用ならない。
そうした思いを覆してくれるすばらしい新書だったと思います。

ただ、最後の請負・派遣労働者を正社員にという提案には、ちょっと待ってと言いたい。
なかには新卒後正社員として勤めて、「これならアルバイトのほうがマシ」とたとえではなく本当にそう思ってアルバイトをする人もいるのです。
また、熊沢誠が指摘しているように、学生時代のアルバイトを通じて正社員の働き方を知り、「これだったら正社員よりもアルバイト・パートのほうがマシ」と思ってはじめからフリーターかニートになる人たちもいます。
オタクとして同人誌を作っている人たち、音楽や演劇など芸術のために時間が欲しくてあえてアルバイトをやる人たちもいます。
なおブラック企業と噂されている会社をはじめ、とんでもない労働条件の正社員を使っている企業もあります。
そういったことを考えると、正社員化だけでは問題解決にはならないでしょう。
国の労働・福祉条件を総合的に上げていかなければ、正社員になれない/ならない層はこれからも生まれます。
さらに均等待遇の導入によって、非正社員でもさほど不利ではないシステムを作ることも大切です。

そうした思考を導くきっかけの提供になるという点で、議論のしかけ人としての勤めをよく果たされたと思います。
偽装請負派遣班のみなさま、お疲れ様でした。



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