めちゃくちゃ仕事のできる男が会社にいる。彼は俺よりも3つも年下だが、俺よりも社会人経験が長く、しかも前職では生き馬の目を抜く芸能界の最先端で修羅場をくぐりまくってきたため、誰よりも肝が据わっている。
彼が入社したとき、たまたま俺が直前の入社だったので、なんとなく俺が教育係っぽいことをした。議事録の書き方とか、HTMLの小ワザとか、今思えば「なんであんなこと教えたんだっけ?」という感じだが、彼はそれが嬉しかったらしい。
だが、俺は彼が怖かった。それは、あまりに頭の回転が早いから。それは、あまりにバックボーンが違うから。あと、なんだか良く分からないけど、彼だけ毎日スーツだったから。あと、飲み会とかに誘うと「それって僕が行くと楽しいんでしたっけ?」とか、とりつく島もないことを言うから。
あれから3年の時が過ぎた。その間、俺は7つものサービスを渡り歩き、定住地のないボヘミアンっぷりを発揮したが、彼は最初から一貫して1つのサービスに取り組み、確実に結果を出してきた。
ここまでで、俺と彼の素養の決定的違いが分かる。それは、仕事に対する“気負いの大きさ”だ。「○○業界を変えたい」という、彼がそのサービスを担当することでしか持ち得ないスケールの大きな気負いが、結果、何人の侵食をも許さない。気負いがビジョンによって生成されるとするならば、彼は自らビジョンを設定し、その気負いをバネにミッションを遂行している。
ミッションのなかには理不尽な数字も、無責任なリクエストも、無意味な雑用も多々ある。が、自らビジョンを設定できれば、それらは通過点に過ぎず、大した問題ではなくなる。俺は、自らビジョンを持ち得なかった……それは、「なんか大きなことがやってみたい」という曖昧な理由でいまの会社に入り、以降与えられたミッションをひたすらこなすことに終始してきたからだ。
もちろん、俺も気負いは持っていた。だが、それはあくまでミッション単位での気負いであり、バックボーンとしてのビジョンはなかった。
また、「世の中をどうしたいか?」という領域にまで踏み込むような大きなビジョンは組織が持つもので、個人がそれを持つのは全体として非効率的だと思っていた。
そんな彼と俺が、出逢ってから約2年半後にあたる去年の年末に、はじめていっしょにちゃんとした仕事をした。それは、現場から会社に大きなビジョンを提示するという、とても刺激的な仕事だった。個人が持つビジョンが、組織にミッションを生み得るということを知った。そして、ほとんどすべての数字目標をクリアした。
この仕事は実は単発の効果測定であり、その結果をもとに今後2年間の事業計画を立てる予定だった。しかし、諸般の事情で彼も俺もその他のメンバーも、もうこれに関われそうにない。
それは、なぜか?
何が問題だったのか?
誰に責任があるのか?
ビジネスモデルは煮詰まっていたのか?
ほとんどの数字目標をクリアしたのに?
現場からの評価は高いのに?
営業の引き合いもものすごいのに?
これを、今週末の飲み会で、議論した。「朝生」ばりに。いやがおうでもヒートアップする、彼と俺。しかし、前述の様に相手は超々豪速球を投げるスーパーエース。俺は、やっとの思いでファウルを打つのが精一杯。しかも、ときどき一塁か三塁の内野手に、フェンスギリギリでキャッチされる。
でも、実は答えは明白なんだ。
“俺の気負いがちっぽけだった”
……って、ただ、それだけ。
しっかし、とても有意義な時間だった。
多分、一生忘れないと思う。
ありがとう。
彼が入社したとき、たまたま俺が直前の入社だったので、なんとなく俺が教育係っぽいことをした。議事録の書き方とか、HTMLの小ワザとか、今思えば「なんであんなこと教えたんだっけ?」という感じだが、彼はそれが嬉しかったらしい。
だが、俺は彼が怖かった。それは、あまりに頭の回転が早いから。それは、あまりにバックボーンが違うから。あと、なんだか良く分からないけど、彼だけ毎日スーツだったから。あと、飲み会とかに誘うと「それって僕が行くと楽しいんでしたっけ?」とか、とりつく島もないことを言うから。
あれから3年の時が過ぎた。その間、俺は7つものサービスを渡り歩き、定住地のないボヘミアンっぷりを発揮したが、彼は最初から一貫して1つのサービスに取り組み、確実に結果を出してきた。
ここまでで、俺と彼の素養の決定的違いが分かる。それは、仕事に対する“気負いの大きさ”だ。「○○業界を変えたい」という、彼がそのサービスを担当することでしか持ち得ないスケールの大きな気負いが、結果、何人の侵食をも許さない。気負いがビジョンによって生成されるとするならば、彼は自らビジョンを設定し、その気負いをバネにミッションを遂行している。
ミッションのなかには理不尽な数字も、無責任なリクエストも、無意味な雑用も多々ある。が、自らビジョンを設定できれば、それらは通過点に過ぎず、大した問題ではなくなる。俺は、自らビジョンを持ち得なかった……それは、「なんか大きなことがやってみたい」という曖昧な理由でいまの会社に入り、以降与えられたミッションをひたすらこなすことに終始してきたからだ。
もちろん、俺も気負いは持っていた。だが、それはあくまでミッション単位での気負いであり、バックボーンとしてのビジョンはなかった。
また、「世の中をどうしたいか?」という領域にまで踏み込むような大きなビジョンは組織が持つもので、個人がそれを持つのは全体として非効率的だと思っていた。
そんな彼と俺が、出逢ってから約2年半後にあたる去年の年末に、はじめていっしょにちゃんとした仕事をした。それは、現場から会社に大きなビジョンを提示するという、とても刺激的な仕事だった。個人が持つビジョンが、組織にミッションを生み得るということを知った。そして、ほとんどすべての数字目標をクリアした。
この仕事は実は単発の効果測定であり、その結果をもとに今後2年間の事業計画を立てる予定だった。しかし、諸般の事情で彼も俺もその他のメンバーも、もうこれに関われそうにない。
それは、なぜか?
何が問題だったのか?
誰に責任があるのか?
ビジネスモデルは煮詰まっていたのか?
ほとんどの数字目標をクリアしたのに?
現場からの評価は高いのに?
営業の引き合いもものすごいのに?
これを、今週末の飲み会で、議論した。「朝生」ばりに。いやがおうでもヒートアップする、彼と俺。しかし、前述の様に相手は超々豪速球を投げるスーパーエース。俺は、やっとの思いでファウルを打つのが精一杯。しかも、ときどき一塁か三塁の内野手に、フェンスギリギリでキャッチされる。
でも、実は答えは明白なんだ。
“俺の気負いがちっぽけだった”
……って、ただ、それだけ。
しっかし、とても有意義な時間だった。
多分、一生忘れないと思う。
ありがとう。