池田氏はよくグローバルとかマクロといった言葉を使って全体をよく見て物事を考えることを推奨しています。全体をよく見て物事を考えることそのものに異論はないのですが、池田氏がそれを実践できているかは非常に疑問です。これは昔「環境問題のウソ」の書評を書いたときにも指摘したんですが「正義で地球は救えない」ではこれがさらにわかりやすい形になって表れています。
P99~100
>環境変動により、元の生息地には棲めなくなってしまった生物は、外来生物として他の生態系に侵入して生き延びるほかはないので、すべてを現状維持しようという努力は、結果として種の絶滅に手を貸すことになりかねない。侵略種として猛威をふるっているグリーンアノール(トカゲの一種)は、本来の生息地(北アメリカの南部)では、さらに南のキューバなどから侵入してきたブラウンアノールに駆逐され数を減らしてきているという。侵入地域では外来種として駆除され、本来の生息地では他の外来種により亡ぼされてしまったら、この生物種は地球上からいなくなってしまう。地球規模でグローバルに考えることが必要なのだ。
人類にとっていちばん重要なことは、種の絶滅を防ぐことだ。生態系の固有生物相の保全や本来の生息地での固有種の保護も大事だけれど、それにこだわるあまり、種が絶滅してしまったら、元も子もない。
ふむふむ。すごいですな。ご自身の主張がブーメランとなって跳ね返ってきている。
批判にあたり、補足知識を追加しておきます。まず、グリーンアノールは複数の固有種の絶滅ないしは著しい減少にかかわっています。
国立環境研究所によれば
>食物となる樹上性かつ昼行性の昆虫。オガサワラシジミはおそらくグリーンアノールによる捕食のために絶滅かそれに近い状態となった。オガサワライトトンボ、オガサワラトンボ、シマアカネ等の固有のトンボ類も父島と母島ではほぼ絶滅し、グリーンアノールの侵入していない属島に残るのみとなった。オガサワラゼミなどの大型の昆虫も捕食され、種によっては著しく数を減らしている。
とあります。
さて、ここでいくつかのシナリオを考えてみましょう。
1本来の生息地でも侵入先でもグリーンアノールが絶滅する→地球上から消える種は1種
2本来の生息地でも侵入先でもグリーンアノールが生き残る→グリーンアノールの補食のため侵入先の固有種のうち2種以上は最低でも絶滅し地球上から消える
3本来の生息地では生き残り、侵入先では絶滅→地球上から消える種はなし
保全生態学上もっとも好ましいのは3でしょう。池田氏は種の絶滅を防ぐことが重要とおっしゃっていますので当然複数の種が絶滅するのは好ましくないと判断するでしょう。さて、池田氏の主張は1のシナリオを防ぐために侵入先のグリーンアノールの駆除はグローバルに考えて好ましくないというものです。しかし、先に述べたようにグリーンアノールは少なくとも2種以上の絶滅に関与し、これを放って置いた場合その被害はこれからも増えると予想されます。ということはグローバルに考えるとグリーンアノールを侵入先で駆除したほうがより多くの種を守れるということになります。
単純に考えると1種残るより複数種残った方が地球規模でも種多様性が保たれるはずです。なぜ池田氏は1種を守るためだけに複数種を絶滅させることを容認するのでしょうか?グローバルに考えると池田氏とは全く別の結論が出るのはなぜでしょう。
今回の論点は「1種を守るのに複数種を犠牲にする必要があるのか」ということでした。
P99~100
>環境変動により、元の生息地には棲めなくなってしまった生物は、外来生物として他の生態系に侵入して生き延びるほかはないので、すべてを現状維持しようという努力は、結果として種の絶滅に手を貸すことになりかねない。侵略種として猛威をふるっているグリーンアノール(トカゲの一種)は、本来の生息地(北アメリカの南部)では、さらに南のキューバなどから侵入してきたブラウンアノールに駆逐され数を減らしてきているという。侵入地域では外来種として駆除され、本来の生息地では他の外来種により亡ぼされてしまったら、この生物種は地球上からいなくなってしまう。地球規模でグローバルに考えることが必要なのだ。
人類にとっていちばん重要なことは、種の絶滅を防ぐことだ。生態系の固有生物相の保全や本来の生息地での固有種の保護も大事だけれど、それにこだわるあまり、種が絶滅してしまったら、元も子もない。
ふむふむ。すごいですな。ご自身の主張がブーメランとなって跳ね返ってきている。
批判にあたり、補足知識を追加しておきます。まず、グリーンアノールは複数の固有種の絶滅ないしは著しい減少にかかわっています。
国立環境研究所によれば
>食物となる樹上性かつ昼行性の昆虫。オガサワラシジミはおそらくグリーンアノールによる捕食のために絶滅かそれに近い状態となった。オガサワライトトンボ、オガサワラトンボ、シマアカネ等の固有のトンボ類も父島と母島ではほぼ絶滅し、グリーンアノールの侵入していない属島に残るのみとなった。オガサワラゼミなどの大型の昆虫も捕食され、種によっては著しく数を減らしている。
とあります。
さて、ここでいくつかのシナリオを考えてみましょう。
1本来の生息地でも侵入先でもグリーンアノールが絶滅する→地球上から消える種は1種
2本来の生息地でも侵入先でもグリーンアノールが生き残る→グリーンアノールの補食のため侵入先の固有種のうち2種以上は最低でも絶滅し地球上から消える
3本来の生息地では生き残り、侵入先では絶滅→地球上から消える種はなし
保全生態学上もっとも好ましいのは3でしょう。池田氏は種の絶滅を防ぐことが重要とおっしゃっていますので当然複数の種が絶滅するのは好ましくないと判断するでしょう。さて、池田氏の主張は1のシナリオを防ぐために侵入先のグリーンアノールの駆除はグローバルに考えて好ましくないというものです。しかし、先に述べたようにグリーンアノールは少なくとも2種以上の絶滅に関与し、これを放って置いた場合その被害はこれからも増えると予想されます。ということはグローバルに考えるとグリーンアノールを侵入先で駆除したほうがより多くの種を守れるということになります。
単純に考えると1種残るより複数種残った方が地球規模でも種多様性が保たれるはずです。なぜ池田氏は1種を守るためだけに複数種を絶滅させることを容認するのでしょうか?グローバルに考えると池田氏とは全く別の結論が出るのはなぜでしょう。
今回の論点は「1種を守るのに複数種を犠牲にする必要があるのか」ということでした。
全体論者、アンチ要素還元主義者には詭弁やレトリック依存症が多いように感じます。私は、何か言うべき中身のあることを持っていないけど目立ちたい、という欲求がそうさせているのではないかと睨んでいるのですが。(生態学者の伊藤嘉昭は自伝で、柴谷篤弘に向かって「反主流派を掲げて目立ちたいだけでしょ?と言ったら激怒された」なんて述べていました)
ところで舟木亨氏の進化論5つの謎の感想1と2が別のカテゴリになっていますので、同じカテゴリにまとめてくださる方が同区者にとってわかりやすいと思います読者にとってわかりやすいと思います。私も同書を読みましたが、全て間違っているのではなく、正しく理解している部分もあって、とてつもなくアクロバティックな本だなあと思いました。
最近では論理的思考うんぬんよりただ単に調べるということができない人たちなのではないかとも思っています。そのうち記事にします。
池田氏の場合は最初は私怨だったと思いますがいつしかあんな風になってしまいましたね。
舟木氏の件了解です。