

○ドゥイージル・ザッパ「ザッパ・プレイズ・ザッパ」(DVD)
○ドゥイージル・ザッパ「ザッパ・プレイズ・ザッパ」(CD)
ドゥイージル・ザッパが父フランク・ザッパの曲を演奏するプロジェクト「Zappa Plays Zappa」のライヴDVD日本盤がリリースされた。音源部分をダイジェストしたCDも同時発売である。※
撮影・録音は、2006年12月21日オレゴン州ポートランドRoseland Theatre及び同12月22日ワシントン州シアトルParamount Theatreの2か所。
これはもう圧倒的にCDを聴くよりDVDを見るほうが楽しい。
若手ミュージシャンを中心に構成された専属バンドによるフレッシュで生き生きとした演奏をベースに、ゲストとしてザッパ御大と深くかかわっていたミュージシャンたち(ナポレオン・マーフィ・ブロック、テリー・ボジオ、スティーヴ・ヴァイ)が参加し暴れまわる。
ドゥイージル君は、DVDにおまけ収録されたインタビューで、「フランクの音楽はコンテンポラリーなものだ。だから若手のミュージシャンをオーディションして集めた。昔のメンバーを並べただけの懐古的なイベントにしたくなかった」と言っていたが、その狙いは十分に達成されていると思う。
ほんとうにバンドが良いのだ。御大が生きていたらそのまま使いたくなるのではと思うほど。
なかでもサックス、フルート、キーボードを駆使しながらパワフルなヴォーカルを聞かせるシーラ・ゴンザレスはとびぬけている。そして少々地味ながら的確なリズムをたたき出すドラムスのジョー・トラヴァース(彼はザッパ音源の管理人でもある)もなかなか。
だからこそ、このバンドの充実ぶりを楽しむには、音源だけのCDを聴くよりもDVDを見た方が絶対にいい。彼らのたたずまい、手さばき、演奏を楽しんでいる様子をストレートに体感することができるから。
若僧に負けてはならじと思ったのか、ゲストの面々の演奏も素晴らしい。
ナポレオン・マーフィ・ブロックは頭が薄くなって見かけは老いてしまったけれど、全く衰えを感じさせない見事なヴォーカルとサックスを聞かせる。
テリー・ボジオは蜂の巣のような巨大なドラムセットを叩きまくるだけでなく、「I'm So Cute」や「Tryin' To Grow A Chin」では破壊力に満ちたパンキッシュなヴォーカルを披露する。
そしてスティーヴ・ヴァイはイバニーズのギター(今は"アイバニーズ"っていうのか)を駆使して、さすがのプレイを見せる。とりわけ「Zomby Woof」でのソロは凄い。かつて父ザッパのアルバムに「Stratcaster Abuse」(ストラトキャスター虐待)とクレジットされただけのことはある。
一方、バンマスであるドゥイージル君も気合の入った演奏を聴かせる。親父さんよりやや線は細いものの「Black Napkins」や「The Torture Never Stops」でのソロは見事。でもコンサート開始早々に涙ぐんでしまうのはどうかと思うぞ。
なお、ジャケットにあるような大型スクリーンを使った親子共演シーンはないので念のため。(スクリーン企画は2007年ツアーから。)
まじめすぎて父ザッパにあったユーモアに欠けるとか、各メンバーのソロ回しになると冗長になってしまうとかの不満点はなきにしもあらずだし、果てはamazonのユーザーレビューでは「ほかにやるべきことがあるだろうが」などと罵倒されていたりもするけど、僕はドゥイージル君の姿勢を支持したい。ゼロから始めてこれだけのメンバーを集め、これだけのものを作り上げたんだから。この演奏の楽しさを味わわないのは単純に損してると思うよ。
やっぱ来日公演見にいくべきだったね…。
まあとにかく見てください。「Tell Me You Love Me」
ドゥイージル君が見事なソロを聞かせる「Black Napkins」
時間のある方は、ZPZオフィシャルのビデオコーナーで「Call Any Vegetables」と「Zomby Woof」をぜひ。
※ 当初このDVDはBarfko-Swill通販のみでリリースされたが、今回の日本盤リリースとほぼ同じタイミングで、米国でもRazor&Tieから一般発売される(された?)ようだ。CD(これはBarfkoリリースなし)については、通常盤は日本盤と同じく1CDだが、DVDとセットになったものはDVDの音源すべてを収録した3CDらしい。
ちなみにそのセットに含まれるDVDのリージョンコードは、HMVではリージョンフリー、amazonではリージョン1となってるんだけど…どっちがほんとなの?