■どんな本か
人間と性をテーマに長年教育に携わってきた著者を『校長』とし、各教科の『先生』達がそれぞれのテーマを教え、最後には対談も交えながら人生と性について論じる本。
■内容
生きるうえで性について知ることは不可欠だ。
自己を知り人を知り、関係を育むのが性教育であるべきなのに、日本の学校では今日現在もセックスを教えないなど【はどめ規程】が残り、産む性にとどまっているこたが問題だ。
①更年期(高橋怜奈)
・女性は閉経前後5年間。閉経50歳が平均だから45-55歳。(とはいえ50歳過ぎても半数が生理ある。個人差あるから年齢だけで区切るのは注意。)
人生100年時代、まだ折り返し地点。
原因はエストロゲンの減少。中でも自律神経安定させていたものがなくなり、ホットフラッシュなど起こる。周期不安定、不調でたら婦人科受診を。
・男性は40代から50代にかけてスタート。テストステロン減少。女性に比べゆるやか。ただ見えにくい、意識されにくいのは問題。症状は女性と似ている部分も。泌尿器科でホルモン補充できると治ること多い。
・更年期離職を避けるためにも、休みやすい社会を作ろう。
②セックス(宋美玄)
・誤解の多い男性と、知識乏しい女性の行為、楽しく満たされないのは当たり前。ファンタジーに溢れているアダルトコンテンツも、受け手にリテラシーあれば何がファンタジーかがわかる。
・人は繁殖以外の目的でセックスをする生き物。こうでなければならない、という思い込みを手放そう。具体的に手放すべきは男性器中心の考え方。フルコースじゃなくてもいい。焼肉食べられなくなっても、アラカルトで楽しめる。
一方で同意は夫婦であっても必要。50代の男性81%がしたい。女性は同じ50代で31%。(両方ともたまに思う、も含める)主体的にしたいと思ってない相手に強いる負担、させるな。
③パートナーシップ(太田啓子)
・離婚を扱う弁護士による章。相談くるケースはマニュアルでもあるかのように似通う。妻側は何年も悩んだ上に離婚に行き着くが、夫は青天の霹靂だと思い、謝罪するも無理だとわかると逆上。『愛してる』と主張。
なぜ似通うかというと、性別役割分担の考えから抜け出せていないから。男の人、ケアされて当然と思って自分がケアする側だと気付かない人いる。まるで赤ちゃん(辛辣!)。ずっと不機嫌でいることは精神的DV。
解決するために必要なことは、傾聴。
④性的指向と性自認
・性的マイノリティはいないことにされていただねめ、最近増えたわけではない。
LGBは性的指向。誰が好きか。
TQは性自認。
SOGI、誰しも関係している。
シスジェンダーでヘテロセクシャルがマジョリティな社会。マジョリティ側にいると見えない。
アウンティングは犯罪。
差別禁止の法が成立していないのはおかしい!
⑤性暴力(斉藤章佳)
・自衛ではなく、加害者にならないアプローチが結果的に多くの被害者を救う。
加害者はモンスターではなく普通の人がなる。
激しいレイプだけか性被害ではない。すべての、同意のない性的な行為が当てはまる。
・ノットオールメン、という反応はおかしい。
・なぜ痴漢(等)するのか??
性欲が抑えられない、は違う。
警察が用意するストーリー、男性に都合の良いロジック。例えば妻とはセックスレスだったから、暴走してしまった、というように。
自尊心感情傷ついたときに加害性が発露する。支配欲満たし優越性確保し達成感を得る。
いわば不適切なストレス対処法。
・自分より弱いものを支配するという意味では、男性優位社会が生み出したものでもある。女性をモノ化する考え。
一つの解、教育。
そしてもう一つは、自分の内面を語ること。
男性も弱さをさらけ出せるように。
⑥ジェンダー(田嶋陽子と著者との対談)
・日本の性教育は貧困。いきなり生理の話。
そして大事なことが抜け落ちたまま、興味の延長としてセックスの方法だけ知るものではない。
・江戸時代、混浴当たり前で奔放でオープンだった春画の文化。欧米の価値観で持ち込まれる、恥の意識。明治の大日本帝国憲法で、女性は二級市民に貶められる。その意識と慣習が、今も残る。
・求められる男らしさ。理性的、たくましさ。弊害は心を押し殺してしまうこと。
求められる女らしさ。気配り、従順。弊害は自分を持ちにくいこと。
・生殖を含む性的なタッチは年齢によって変わるけど、根底にある生き物としてのラビングタッチはずっと続けられる。そしてセルフプレジャーも。
■感想
なんとも学びの多い本だった。タイトルで損してると誰かがレビューに書いてあったが全くその通り。そして80代の著者がこんな先駆的な考えなのも驚きだし、それぞれの章を書いているのが30-40代なのも好感。違うアプローチなのに、似通う結論や考え方も興味深い。(男の子は感じることを言語化することをさせられずに大きくなる、とか。)
それぞれ本を書いているようなので、読んでみたい。ちなみに1番面白かったのは、性暴力の章。(弁護士の話は男にやたら厳しくて途中笑える。)
教育って大事だわー。