中根千枝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
東大で名誉教授を務めた社会人類学者である中根千枝による書籍。
1967年発行。
日本の社会的構造を他国のそれと比較する形で分析し、その特徴を解明することが本書の主題とされている。
本書における筆者の主張をまとめると、下記の3つである。
①日本社会における集団意識では「場」が優先される
② 日本人は「ウチ」「ヨソ」の意識が強く、人間関係の機能の強弱は実際の接触の長さ、激しさに比例する
③日本の組織の階層は強い「タテ」の関係で構成される
①は、一定の個人から成る社会集団の構成の要因は、二つの異なる原理「資格」と「場」の共通性に大分できるという前提に立つ。
「資格」とは、社会的個人の一定 -
Posted by ブクログ
本書は1967年に初版が出されたものではあるが、現代社会の会社の中に、そして政治を動かす政党、官僚組織にも概ね当てはまる内容である。少なくとも私が所属する会社も一般的には社員規模数万人の大企業と言われ、本社組織だけでも1000人以上が働く会社であり、本書の言うタテの構造が全く当てはまっている。今日も誰かが書いた稟議書を眺めながら、誰かが提出してくる企画書を忙しく眺めながら、「そこだけ担当してる立場ではないから、こんなに専門的に(さも知ってるかの様に)書かれても解らないよ」との考えを頭の隅に追いやって、まるで無意識でもある様に書類を決裁者に回す。時折、自分の存在に自信を失うほど、決まりきったタテ
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Posted by ブクログ
まちライブラリーの女性スタッフに勧められたまちライブラリーにあった本です。
まえがき
プロローグ 日本の先輩・後輩関係
第1章 タテの関係とは?
第2章 タテ社会の「いま」
第3章 「タテ」の発見
第4章 これからのタテ社会
エピローグ 場は一つとは限らない
付録 日本的社会構造の発見――単一社会の理論 1964年中央公論
1序論
2資格と場による集団構成
場を強調する日本社会
3集団成員による全面的参加
集団の結束と孤立を招く一体感の強調
地域的で接触的な人間関係
4「タテ」組織による人間関係
「タテ」の関係 序列の発達 対立でなく並立の関係
5集団内部の構造
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Posted by ブクログ
1967年に書かれた本なのに、今となんら変わっていない。日本社会の単一性、「場」による集団の形成は、身をもって感じているが、認識は出来ていなかった。インドや他の国との対比では、こんなにも違うのかと驚いた。
複数の場への所属は、日本人は心理的にすごく抵抗があるが、中国の方はどんどん転職されていた。
親分・子分や序列意識では、笑ってしまうぐらい身の回りで起きている「タテ」の関係だった。能力主義も序列システムの枠内の狭い範囲で、改めて見回してみると確かにそうだと感心してしまった。
「タテ」から抜け出して、生産的な会議が開催される日はまだまだ遠そう。 -
Posted by ブクログ
刊行から50年とのことだが近著と言われてもわからない程、現代の日本にも当てはまっている。それは日本が今もまだ同質の単一社会であり続けているからだろうか。
では今後の日本はどうあるべきかというところまではは本書が扱う範疇を超えているが、これが世に出てからは可成の議論が可能であった筈。それなのに現代社会がその弊害をそのまま抱え続けてきたことに対し、先人達に失望せざるを得ない。
とは言えかく言う自分自身もこの社会の一員として、知ってか知らずか相応の振舞いをしてしまっている以上、非難すべからざるところか。反省。
他文化との比較に於いて論証が不十分の嫌いはあるが、新書という形式上この程度かなと割り切って -
Posted by ブクログ
50年前に刊行されていまだに読み継がれているという日本社会を論じた代表的な書籍になります。いままで読む機会がなくようやく読みましたが、納得する点も多々ありました。原則ではなく人間関係がモノを言う、「ウチ」と「ソト」の意識、などの概念は今でも十分通用すると思います。ただ学術書ではなく一般書を意識してあえてそうしたのかもしれませんが、データの裏付けや検証部分については省かれていて、うがった見方をすれば「それは著者の周囲の偏った社会の中だけではないのか?」ということも言えるわけです。また海外との比較もたまに書かれていますが、英国、インドとこちらもかなり限られたサンプルとの比較であることは否めません。