コードレス掃除機の市場が活況だ。大手家電量販店のビックカメラによると縦型コードレス掃除機の販売台数は、前年比30%の伸びで推移している。市場をけん引するのは欧州勢だ。英ダイソンは9月13日に新型コードレス掃除機「DC62」を発売。スウェーデンのエレクトロラックスも10月1日に「エルゴラピード・リチウム」を投入する予定だ。
両社とも世界で最初に新製品を発売する国として日本を選んだ。ダイソンでモーター製造の責任者を務めるエイドリアーノ・ニロ氏は「日本はどの国よりも清潔好き。世界でも都市部では住宅が狭くなっているので、日本で売れたら海外でも受け入れられる」と話す。ダイソンのDC62の店頭価格は6万9800円、エレクトロラックスは3万9800円。エレクトロラックススモールアプライアンス事業部のヘンリック・バーグストロームプレジデントは「日本は世界一美味しい市場。消費者は、高い品質に対してきちんと対価を支払ってくれる」と話す。
これまで縦型コードレス掃除機は、コード付きのメイン掃除機の補助役、といった使い方が主流だった。電池のもちが十分でなく、吸引力も弱いというイメージが強く、階段や2階など、メイン掃除機の行き届かない場所を掃除する2台目需要が主だった。
ダイソンやエレクトロラックスの新製品はそうではない。両社はメイン掃除機の需要を狙っている。「働く女性は平日にサッと掃除するには、押し入れから出さなければならない従来型の掃除機は面倒だ。コードレスなら短時間で掃除を済ませられる」(エレクトロラックスのバーグストローム氏)。デザインに優れた壁掛け台や専用の充電台を用意し、リビングにも置いても違和感がないようなデザインにした。
コードレス掃除機が主役に昇格するための最大の課題は稼働時間。従来のコード付きの掃除機と比べても吸引力を落とさず、各部屋をくまなく掃除できるだけのパワーが求められる。
ダイソンの新製品は、ソニー製のリチウムイオン電池を採用し、独自開発のモーターと組み合わせている。モーターの力を最大限引き出せるように電池のプログラムを工夫した。
スイッチ工夫して電池切れ防ぐ
稼働時間を有効に使うため、スイッチにも工夫を凝らした。ダイソンのDC62の連続稼動時間は20分。20分程度しか使えないと聞けば短く感じるがどうだろうか。
ダイソンはコードレス掃除機の発売前に日本の家庭を訪問し、どのように掃除がされているのか数か月かけて調査したという。すると、掃除にかける時間のうち、実際にほこりを吸い込んでいる時間は意外と短く、スイッチを入れたまま、家具を移動させたり吹き掃除をしている、いわゆる「空ふかし」状態が長いことに気づいた。
そこで従来型の掃除機のように「入」と「切」ではなく、電動ドリルのように、使う時だけレバーを押し続け、指を離せば電源が切れるようにした。
日系メーカーは参入せず
このように両社とも、縦型コードレス掃除機に対して消費者が従来もっていた「偏見」を取り除こうと必死だ。販売現場の動向を見れば、こうした努力が徐々に実を結び始めているのがわかる。では日本メーカーはどうしているのか。
シャープの小幡尚令ランドリーシステム事業部商品企画部部長は「コードレス掃除機は20年以上前からの夢。だが我々が考える吸引力は現状の技術だと作れない」と話す。今年2月に発売したコードレス掃除機「EC-DX100」は、コードレスだが、ダイソンやエレクトロラックスのような縦型ではなく、本体と吸い込みノズルがホースで連結された、従来のキャニスター型。
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