「ここまで一気に導入するのは想定外だ」。日系の自動車関係者は、中国の電気自動車(EV)王者の一手に対し、苦笑いの表情で話す。
中国自動車大手の比亜迪(BYD)は2025年2月10日、自社ブランドのEVなど新エネルギー車に追加費用なしで先進運転支援システム(ADAS)を搭載していく方針を打ち出した。発表会に登壇したBYDの王伝福董事長は、「優れた技術は誰もが利用できるようになるべきだ」と語り、自動運転技術の普及に力を込めた。

今回発表したADAS「天神之眼」は、運転支援技術をA~Cの3ランクに分類。このうち最もランクが低いCタイプの技術を、価格が7万~20万元(約147万~約420万円)台の21車種に追加料金なしで導入する。最も価格が安い小型EV「海鴎(シーガル)」は運転支援システムを搭載しながら、7.88万元(約165万円)に価格を据え置いた。

Cタイプの技術では「レベル2+」相当の自動運転技術に対応する。高速道路でのレーンキープや自律的な車線変更などをナビゲーション付きで支援するほか、運転手が車両を降りた状態での遠隔駐車などに対応する。高性能センサーの「LiDAR(ライダー)」を使用しないことでADASの低価格化を実現したもようだ。
価格破壊で狙うは1年前の再現
10万元を切る格安EVにまで自動運転技術を搭載し、価格破壊に打って出たBYD。だが、同社はこれまでライバルが自動運転技術を強化する中、出遅れが指摘されてきた。
BYDの王董事長自身、かつて「自動運転なんてナンセンス」と語ったことがあるほど、自動運転とは距離を置いてきた歴史がある。普及価格帯では圧倒的なシェアを誇る一方で、高価格帯で苦戦する一因となっていた(関連記事:「BYD・ファーウェイが大型提携 日本勢はSDV開発に踏み込み不足」)。
【お申し込み初月無料】有料会員なら…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号13年分のバックナンバーが読み放題