米グーグルがアンドロイドOS(基本ソフト)の国内シェア向上に本腰を入れ始めた。グーグル製スマートフォン「Nexus」の最新機種を初めてNTTドコモとソフトバンクを通じて10月から販売する。Nexusシリーズは、富士通やシャープなど各端末メーカーへの「リファレンス(お手本)」という位置付け。国内では控えめに展開していたが、市場では格安スマホ勢向けの「SIMフリー」端末として「Nexus 5(2013年秋投入)」が人気を博すなど、大手通信会社からの販売を求める声も多かった。
さらに日本は世界と比較して、米アップルのiOSのシェアが高い特殊市場。アンドロイドOSのシェアを世界並みに引き上げるためには大手通信会社経由の販売が急務と判断したようだ。来たる「IoT(インターネット・オブ・シングス=モノのインターネット化)」時代に向け、アンドロイドOSのシェアを高め、地ならししておきたいという思惑も見え隠れする。米グーグルでアンドロイドOSを統括するヒロシ・ロックハイマーAndroid担当上級副社長に話を聞いた。
(聞き手は井上理)
日本ではiOSのシェアが世界平均に比べて高い。グローバル並みにアンドロイドOSの比率を高めるには、日本で何をしなければいけないと思っていますか。
ロックハイマー氏:国ごとに状況も違えば、ユーザーさんの好みも異なる。これ1つやれば状況が一変するわけではないと思っています。いろんな端末メーカーや部品メーカーと共同で開発して製品を出していく、というのがアンドロイドのやり方。今回の来日でも、いろんなメーカーさんを回っていますが、会話を続けていくことが重要だと思っています。
もちろん、通信会社と一緒に売っていくということも大事。2年ほど前ですが、「Nexus 5」というスマートフォン(スマホ)をYモバイルから出させてもらって、これがけっこう売れました。今年の夏も個人的に家族と来日したのですが、地下鉄に乗った時、Nexsu 5を使っている人をかなり見かけました。日本ではそういった経験があるので、今回のNTTドコモとソフトバンクとの取り組みには期待しています。
NTTドコモとソフトバンクがNexusシリーズを扱うのはこれが初めてです(「Nexus 5X」がNTTドコモとYモバイルから、「Nexus 6P」がソフトバンクから販売)。端末としてどんな魅力があるのでしょうか。
ロックハイマー氏:OSなどのソフト、そしてハードを一体となって開発されていることによって、例えば電池のパフォーマンスだとか、カメラも含めた画質だとかが優れている点が挙げられます。
あとは、グーグル製ということで、OSのアップデートの通知がグーグルから直接、すぐに来る、ということも魅力の1つ。機能追加だけではなくセキュリティーのアップデートも頻繁にやっているので、ユーザーさんにはより安心して使っていただけると思います。
ほかのメーカーの端末でも、早くアップデートをかけようと思えばグーグル製端末と同時にやれないこともない。ですが、メーカーや通信会社側でアップデートしたOSが正常に動作するかどうかを検証する必要があり、やはり、1カ月なり2カ月の時差が出てきます。
加えて、Nexusは、アンドロイド端末の中で一番、シンプル。いい意味で簡素化されていて、それを魅力に思っていただけるユーザーさんもいます。購入して最初に起動した時、アプリがそれほど入っていない。自分の好きなものを「グーグルプレー」からダウンロードすればいい、というコンセプト。ほかの端末は最初からアプリがけっこう入っている。それが嫌だという方にとっては、削除する手間が省ける。魅力としては、そういったところでしょうか。
2つの新機種、どちらもかなり気合いを入れて開発してきましたし、Nexus 5や7が世界でかなり売れたので、その後継機種という意味でも期待をかけています。品質に関して自信がありますし、いい製品だと思っている。できるだけ触って使ってほしいですね。
「画面」のある、あらゆるモノをつなげる
米グーグルは、アンドロイドOSをスマホの世界だけに閉じ込めておくつもりはない。昨年、腕時計などウェアラブル製品向けのOS「アンドロイドウエア」、テレビ向けのOS「アンドロイドTV」、そしてカーナビゲーションなど車載端末とアンドロイド端末を連携させる「アンドロイドオート」を立て続けに投入した。
さらに今年5月、グーグルは開発者向け会議で、IoTの新施策を発表。アンドロイドをベースとしたIoT向けOS「Brillo(ブリロ)」と、家電などがアンドロイド端末やブリロ搭載端末と簡単に通信できるためのプロトコル「Weave(ウィーブ)」を、今年秋から年末にかけて投入するとした。広がるアンドロイドの世界についても話を聞いた。
アンドロイドOSの世界が、自動車や家電などあらゆるモノへと広がりを見せています。その戦略やゴールを教えてください。
ロックハイマー氏:コンセプトは何かというと、私たちの生活している環境には、携帯電話やスマホ以外にも、「スクリーン(画面)」を持っている、あらゆるモノであふれていますよね。家庭では、電子レンジや洗濯機にも画面はありますし、エアコンのリモコンにもあります。それは、素朴な画面かもしれないけれど、至るところにある。
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