様々な分野で活躍する一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム。今月は経営戦略や組織の歴史的な研究に取り組む経営学者の米倉誠一郎さんにお話を伺っていく。中学時代はバスケットボール、高校時代はアメリカンフトボールのクォーターバックとして活躍していたという、元アスリートだ。今は多くの企業経営者から熱い支持を受け、講演や講義、そして授業で忙しい毎日を送る米倉さんの健康管理術とはどんなものだろうか。1回目は、体調を保つための食事法について聞いた。
大学を卒業する直前に大学の教員になる道を選びました。その後、助手になってから米国に留学したんです。帰国してから再度、大学で教えるようになりましたが、実はその間、一度も健康について気を付けてきたことがないんです。おいしいものをおいしくいただく、それだけでしたね(笑)。ただ、米国にいる間は、ゴルフやテニスを毎週やっていましたね。何といっても向こうはプレー代が安かった。当時、テニスは夏冬無料、ゴルフのハーフのコースが5ドルで回れましたから。
大学時代、それから米国にいる間は、だいたい体重が65kg程度で、普通ですね。食事や健康管理ということに対して、何も気にしていませんでした。それが原因かと思いますが、数十年かけてだんだんと体重が増えて、今から5~6年ほど前、健康診断で「完全に糖尿病予備群ですね」と医師に指摘されました。その時、身長が173㎝で体重が73~74kgでしたが、70kg以下に落とすようにとの指示でした。それからですね、自分の体や健康について意識するようになったのは。
だからと言って、食事制限や運動するわけではないんです。そこでやったのが、食事の時に“野菜から食べる”ということです。それだけですよ、ダイエット法は。ブロッコリーなどの緑黄色野菜を先に食べるとある程度、満腹感が得られ、ご飯の量も自然と減ります。野菜に含まれる食物繊維のおかげで、糖質や脂質の吸収も抑えられます。とんかつが好きなんですが、その時もキャベツから食べて、次にとんかつをおいしくいただくことにしています。糖尿病の改善や予防になると言われる、糖質を完全にカットするなんてことは意識したことはありません。白いご飯を食べなければ、生きている価値はありません(笑)。
野菜から食べるようにしてから胃が小さくなったようで、全体に食べる量も減ってきました。朝食などはサラダと芽こんぶ、レンコンのきんぴら、それに納豆でご飯をほんの一口くらいです。あと、オクラなどを食べることもあります。食物繊維がたっぷりの食事をしていると、体が軽く感じます。現に、体重も今では68~69kgの間で推移しています。
糖尿病の予防に関しては、治療らしい治療は一度も受けていないんですが、問題ないと言われています。医師にも言われたことですが、バランスの良い食事を心がけて、体重をうまく減らしていくだけで、本当に改善されていくものなんですね。
そうそう、お医者さんといえば僕が診てもらっている方は、ポジティブなことしか言わないんです。体重を見て1 kg増えて69kgを少し超えても「いいですね、これくらいの増減は気にしなくて大丈夫です」、血液検査の結果にしても「変わりがなくていいですね」と。きっと、普通の人と比べれば良くはないんでしょうが、良い方向に向かわせてくれる、やる気を出す言い方をしてくれます。ネガティブなことばかり聞かされていると、本当に病気のような気持ちになりますが、ポジティブな声がけは改善に向けてのやる気が出てきますね。
飲酒の量は減らしても、やめることはない
ただですね、お酒は世の人々の幸せの素(笑)、ですから毎日飲んでいます。人間ドックの前日だって飲んでいます。そうじゃないと本当の姿がわからないじゃないですか、検査の前日だけ飲むのをやめて、数値が良くなったって何の役にも立ちませんよ。でも肝機能を示すγ-GTPの数値は悪くないんです。
ただ、量は減らしましたね。僕は醸造酒、日本酒かワインが好きなんです。どうやって減らすかというと、日本酒の時はお湯を、ワインの時は水を一緒にたくさん飲むようにしています。すると量も減りますし、おかしな酔い方をしなくなります。多分、薄まるんですねアルコールが。学生諸君と飲む機会も増えているんですが、最近は彼らが気遣ってくれて、宴会の時はまずお湯や水をたくさん頼んでくれるんです。
先ほどγ-GTPの数値は大丈夫だと言いましたが、実は尿酸値が高くて、痛風おじさんだったんです。それで、ビールも減らしました。飲むのであれば1杯か2杯、さらに、あまりうまいとは感じないんですが、ハイボールに切り替えて飲むようにしています。まぁ、今から4~5年前までは成人病、今で言うところの生活習慣病のデパートのような体だったんですね(笑)。それが食事の質とお酒の飲み方を工夫することで多少は改善されてきたんです。
(まとめ:松尾直俊=フィットネスライター/インタビュー写真:村田わかな)
法政大学教授
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