昨日は、『未来の働き方を考えよう』の発売記念講演@新宿コクーンホールでした。
文芸春秋本社で行われた柳川先生との対談、丸善丸の内本店と、大阪での紀伊国屋書店グランフロント店での講演に続き 4か所目。全体で 900名の方にご来場いただきました。
本当にありがとう。
さて今日は、昨日の講演で会場から頂いた質問のひとつについて、ちきりんの回答を共有したいと思います。
その質問は、「ちきりんさんは市場で稼ぐ力をつけるためには、ブログ読者やツイッターのフォロアーを集めたり、ヤフーオークションでモノを売ることから始めればいいと言うけれど、
そんなことで稼げる額はごく僅かで、食べていくための生活費を得る所までには大きな隔たりがある。その距離はどうやって埋めればよいのか」というものでした。
たしかにその通りですよね。質問の趣旨も、不安な気持ちもよくわかります。
そしてこの質問に対する私の回答は、下記のようなものでした。
目指しているゴールと、今、自分が立っている地点との距離は、通常とても離れています。
そして、その時点からゴールに辿り着くまでのステップや道筋も、見えていないことが大半です。
でも、その間の道筋が全部きれいに見えてから歩き始めようと考えている人が、ゴールに辿り着くことは決してありません。
辿り着けるのは、ほのかに見えるゴールに向けて、今できることを実際にやってみる人、最初の一歩を踏み出してみる人です。
なぜなら、実際に一歩を踏み出すと、そうする前には見えなかった「その次のステップ」が見えてくるからです。
そうやって一歩進むごとに異なる景色が見え、新たな選択肢が浮かび上がってきます。それをひとつずつ進んでいくと、ある日ゴールに辿り着くんです。
たとえば、今のあたしの立っている場所、ブロガーとして十万人以上の読者を抱え、本を出せば平均 7万部の刷り部数が実現でき、500人の有料講演のチケットが一週間で売り切れる。
最初のブログエントリを書いた 8年前の私には、そんな「今のちきりん」に至るまでの道筋なんて、全く見えていませんでした。
「こうやって、ああやって、その次にこれをやれば、ほぼ確実に人気ブロガーになれる」、なんていう方法論は存在しないんです。
自分もそうなりたいと思う人にできる、もっとも意味のある最初のステップは、「どうやったら人気ブログが書けるのか、あらゆる手段を尽くして研究する」ことではなく、「ブログを書き始める」ことです。
「最初の一歩を踏み出すこと」は、多くの人が思っている以上に重要です。なぜなら一歩踏み出した時に見える景色は、今立っている地点から見える景色とは、全く違っているからです。
一歩進むたびに、異なる景色が現れます。一歩進むたびに取りうる選択肢が増え、今までには思いつかなかったアイデアが出てきます。
一歩を踏み出した時に得られる情報(フィードバック)は、その一歩を踏み出す前には(=その一歩を踏み出さない人には)決して手に入らない、極めて貴重な情報ばかりなのです。
換言すれば、次に何をやるべきかという情報を手に入れられるのは、動き出した人だけなんです。
「始める前に、ゴールまでの道筋を徹底的に研究しよう!」とか、「この道を行けば大丈夫だと、ある程度、見えてきたら歩き始めるつもり」などと考えていると、いつまでも動くことができず、ずうっと同じ場所に立っていることになります。
そんなところでいくら考えていても、ゴールは一ミリたりとも近づいてきません。
一歩を踏み出すんです。そして、その次もまた一歩を。
それを続ければ、どこかに辿り着きます。
それは、当初、自分が想定していた場所じゃないかもしれません。むしろ「想像もしていなかったどこか」に辿りつくことのほうが多いでしょう。
私自身も、まさかこんな場所に到達するとは想像もしていませんでした。
繰り返しておきましょう。
目の前の一歩を踏み出す人だけが、ゴールにたどり着ける可能性をもっています。
始点において、ゴールまでの道筋が見えていないことを不安に思う必要はありません。既にゴールに辿りついた人でさえ、そんなものが見えていた人は誰もいません。
ゴールに到達した成功者に訊ねても、期待できるのは「最初の一歩」を指し示してもらうことだけです。ゴールまでの道筋を示すなんて、誰にもできません。
それは各人が、自分で一歩ずつ進みながら、見つけていくものです。てか、ゴールに到達している人は、みんなそれをやったから、今いる場所に到達できているんです。
組織を離れても食べていける人になりたいですか?
だったら、ごく小さなことでいいから、個人として何かを始めましょう。
その一歩がどのようにゴールにつながるのか、きちんとした道筋が見えていないと不安ですか?
でもね。その不安を払拭する方法は、一歩を踏み出さないと手に入らないんです。
講演を行ったコクーンホール。コクーンは繭(まゆ)という意味。
蚕の繭の中で何かが育っていく感じを表現してるのかな。すごくインパクトのあるビルです。
<過去の関連エントリ>
→ 「成長したければ、ひたすら変化すべし」
→ 「情報は看板に集まる」