「EU FILMDAYS 2024」日仏学院 映画プログラム主任の坂本安美さんの解説あり。
南仏の村で、幼なじみのミラレスとドッグはぶらぶらと毎日つるんでいる。
葉っぱの売人をしているミラレスは、ドッグを見下してからかうことが生きがいだが、エルザという女性が都会からやって来て、2人の歪んだ関係のバランスが崩れていく。
クリーム色の建物が並ぶ旧市街のような美しい街並み。人通りの無い石畳を歩く2人の男と1匹の犬。
静かに流れるのはクラシックのピアノ曲。
この雰囲気で一気に画面に引き込まれた。
本作は南仏のモンペリエ出身のジャン=バティスト•デュラ監督の長編デビュー作。
美しい街並みを外れると、そこは荒涼とした場所が広がり、日々を無為に過ごす若者たちの閉塞感と孤独感が感じられる作品だった。
ミラレスはかなりめんどくさい人物で、忠実な愛犬マラバールとの支配関係を友人のドッグにも強いる。
実は読者家で、あれこれ能書きを垂れるのだが、行動はともわずダラダラ過ごしてるだけ。
ドッグは人はいいのだが自分の意見は言えず、特にミラレスの前では飼い犬のように服従する。
エルザは実は大学出のインテリで、元彼とはまだ関係が切れていない。
ドッグとエルザが付き合うようになり、ミラレスは嫉妬にも近い感情を抱く。
学歴コンプレックスもあるのだろうが、自分より劣っていると思っていたドッグが高学歴美女と付き合っていることが、どうしても許せなかったのだろう。
坂本さんの解説によると、この美しい村も過疎化が進み若者の数は減って、好き嫌いなど関係なく小さい頃からつるんでいた仲間同士が、そのまま大人になっても関係を続けるしかないのだという。
そんな腐れ縁とも言える煮詰まった関係に、外から来たエルザが風穴を開ける。
そして、本作は演劇的でもあるという解説はなるほど思った。
皆がいつもたむろしているのは小さな広場で、そこは石造りの舞台のようでもあり、そこでは役者のように自分の小さな夢などを語る。
大抵はミラレスのひとり舞台なのだが。
そして悲劇もその舞台で起こる。
こじれた人間関係の行方や、彼らの気持ちの変化は、役者たちの演技の素晴らしさもあり、なかなか興味深い作品だった。