このレビューはネタバレを含みます
末期の子宮頸がんを患うマーサは、かつての親友イングリッドと再開し、自分が最期を迎える“その日“まで隣の部屋にいて欲しいと頼む。
私の中では、アルモドバル監督が描く世界は、色んな縛りを取っ払って“生“を謳歌するというイメージだったのだが、今回は“死“を最高のものに演出する話。
暗い雰囲気にならないようにか、いつもよりもっと、無駄のない完璧に計算された美しさと華やかさに満ちたインテリアや衣装。
戦場ジャーナリストだったティルダ•スウィントン演じるマーサは、死というものと常に隣り合わせに生きてきて、数えきれないほどの死を目にしてきた。
ティルダは「自分の人生を完全に生き抜くことは、一種の人生の勝利と言える」と語る。「どのように死にゆくかは、どう生き続けるかに関すること」とも。
元からジェンダーレスっぽいティルダだが、痩せ細り化粧っ気のないマーサは、時にクールな男性にも、無機質な色の無い彫刻のようにも見える。
だからこそ、最後に真っ赤な口紅と黄色のスーツで自分を演出した姿は息をのむ美しさだった。
それに対してジュリアン•ムーア演じる作家のイングリッドは、より“生“を感じさせる。
服装もメイクもきっちりして、ジョン•タトゥーロとの会話もどこか生々しい。
まぁ多大なストレスを抱えたあの状況で、自分を保つには、ちゃんとメイクしてお洒落するっていうのが必要だったのかも。
最後に娘役としてティルダが再び現れた時は、イングリッドと同じように嬉しくなり、人生は続くのだなぁと前向きになれたラストだった。
しかし大事な薬忘れるとかありえんだろ。