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ジョゼと虎と魚たちのBLCKのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
3.9
『ジョゼと虎と魚たち(2003)』は、色褪せない青春の記憶と、映画が持つ特有の空気感に包まれた作品。特に妻夫木聡の輝きと伊賀大介によるスタイリングが、作品全体に際立つ存在感を与えています。大学生らしいラフなファッションに絶妙なおしゃれさを加えたスタイリングは、役柄や映画の雰囲気と見事に調和し、観る者に深い印象を残す。伊賀大介の名前をこの映画で知ったというのも懐かしいところ。

さらに、くるりが手掛けた音楽もこの映画の欠かせない要素。ストーリーの透明感に寄り添いながら、彼らの楽曲「ハイウェイ」の澄んだ響きが映像と絶妙にマッチしています。特に、サントラ全編を通じてくるりが持つ純度の高さが光り、映画全体を引き立てている。

物語自体は、決して現実から目を背けたものになっていない。それでも、登場人物たちが持つ優しさやあきらめない心が、「結局は仕方ないんだ」という人生の柔らかい受容を示してくれる。特に池脇千鶴演じるジョゼの演技は、その過酷な境遇を見せつつも、ひたむきさと強さを感じさせる。彼女の姿は、無理をせず自然体でいることの大切さを教えてくれるように思います。

映像的にもエモーショナルな美しさが満載で、冒頭のフィルムカメラのスライド写真や海辺で撮影されたシーンは、日常の幸福感を再認識させてくれる。物語の中に潜む多幸感が、柔らかい感情をそっと刺激する本作。鑑賞後、日々の中にある「そのままでいいんだ」と思える瞬間を、もう少し大事にしたいと思わせてくれる、そんな特別な映画です。
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