イギリス全土に広がる、草の根ローカルジャーナリズム
英ガーディアン紙によると、2011年の一年間に休刊したイングランド・ウェールズ・スコットランドの新聞は、少なくとも31紙。近年、英国の新聞業界では、大幅なレイオフや、休刊・廃刊が相次ぎ、これにともなって、各地域のローカルなニュースを採り上げるメディアが減ってきました。そこで、従来マスメディアが担ってきたこの機能を補完するべく、地域住民自身が地域の政治、経済、社会事件などを発信する、草の根レベルのローカルジャーナリズムが、英国各地で広がっています。
Will Perrin氏は、これを積極的に推し進めている立役者の一人。英国の草の根ローカルジャーナリズムをサポートするプロジェクト「Talk About Local」の主宰者で、自らもロンドン・キングスクロス地区のニュースサイト「Kings Cross Environment」を運営しています。「Kings Cross Environment」では、マスメディアはあまり採り上げない、地元の小さな事件・事故や、イベント、地方自治体の動静などのニュースを配信。立ち上げ当初は、Perrin氏が一人で取材・執筆していましたが、現在は、6名のライターがボランティアでこれに関わっています。
Perrin氏は、「必ずしも、すべてのニュースを専門のジャーナリストが執筆しなければならないわけではない。むしろ、現場近くで生活している地域住民こそ、現場で何が起こっているか? を知っているはず」と考え、専門スキルのない人でも、これらのニュースを不特定多数に向けて発信する手段として、ブログやソーシャルメディアの活用が有効だと説いています。
ブログやソーシャルメディアを活用するメリットは、専門的なスキルがない人でも、簡単に管理でき、運営のための資金がほとんどかからないこと。Wordpressなどのブログサービスや、フェイスブック、ツイッターは、ユーザ登録などの簡単な手続きだけで無料で利用できます。また、継続的に運営できれば、オンライン上で、大手メディアに劣らないプレゼンスを得られる、というのも、オンラインメデイアならではの利点です。たとえば、バーミンガムDigbeth地方のニュースブログ「Digbeth is Good」は、既存メディアを抑え、Digbethで最もオンラインプレゼンスの高いメディアとなっています。
Perrin氏がまとめたローカルメディアディクショナリーサイト「openlylocal」によると、「Kings Cross Environment」や「Digbeth is Good」をはじめ、草の根によるローカルニュースメディアは、英国全土に500以上。そのほとんどは、個人もしくは2~3名の小グループで運営されています。Perrin氏は、草の根ローカルニュースメディアを持続させるコツとして、個人の趣味で管理できる程度に小さな範囲でスタートさせること、メディアから収益をあげることは当面考えず、あくまでも公益的な視点で取り組むこと、と指摘しています。