小野耕世
小野 耕世(おの こうせい、1939年11月28日 - )は、日本の映画評論家、漫画評論家、海外コミック翻訳家、海外コミック・アニメーション研究家。
アメリカンコミックス紹介で、KOSEIというペンネームを使っていたことがある。
日本における海外コミックの翻訳出版および研究、紹介の第一人者。元NHK職員。日本マンガ学会理事をへて3代目会長。日本漫画家協会会員(参与)。
熱気球パイロットのライセンスを持っており、日本気球連盟会員。
父は漫画家の小野佐世男。
人物・経歴
[編集]東京市世田谷区代田に生まれるが、自宅が空襲にあい、埼玉県指扇(さしおうぎ)の母方の親戚宅に疎開する。戦中にインドネシアに渡っていた父の小野佐世男が1946年5月末に帰国し、世田谷・北沢の父の姉の家に家族で転居する。1年後に世田谷代田に転居し、小学3年生の途中で成城学園初等科に転校する。手塚治虫とアメコミと映画に熱中して育つ。1954年、父が急死する。
成城学園初等学校、成城学園中学校卒業。東京学芸大学附属高校に入学したが、1学期で東京都立新宿高等学校に編入して、同校を卒業。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。のちの考古学者・小山修三は大学時代の親友[1]。
NHKに入局。在職中『SFマガジン』に「SFコミックスの世界」を連載するなど、世界各国の漫画の紹介に力を注いだ。
1973年、同じくNHKのディレクターだった龍村仁(現ドキュメンタリー監督)と共にATGで矢沢永吉などが所属していたバンドキャロルのドキュメンタリー映画『キャロル』を制作(小野は脚本を担当した)。結果、龍村と共にNHKを解雇され、解雇を無効として裁判まで行った。
以後、映画評論、漫画研究で活躍することとなった。世界各国でのコミック研究では、ヒーロー物の「アメコミ」から、ロバート・クラムのようなアンダーグラウンド・コミックス、アート・スピーゲルマンのようなグラフィック・ノベル、ヨーロッパのアート系コミックス、他にアジア諸国のマンガまで、幅広くカバーする。また、それから派生したアニメーションについても研究している。
他に、多くの海外コミック作品の翻訳を行っており、また頻繁に海外を訪れ、世界各国のコミック作家たちと交流している。国士舘大学21世紀アジア学部客員教授をつとめた。
長年の世界各国コミックの日本への翻訳出版、紹介と評論活動が認められ、2006年、第10回手塚治虫文化賞特別賞を受賞している。また、2014年、第18回文化庁メディア芸術祭功労賞受賞。
一方で、日本SFの創世期からSF小説の創作活動も行っており、1961年の第1回空想科学小説コンテストで奨励賞を受賞している。SF同人誌「宇宙塵」にも参加した。SF小説集である『銀河連邦のクリスマス』も刊行している。
日本SF作家クラブ会員だったが、2013年、他のベテランSF作家らとともに名誉会員になった[2]。だが2023年4月現在は、会員名簿に名前がない。
著書
[編集]- 『バットマンになりたい - 小野耕世のコミックス世界』(晶文社) 1974
- 『ぼくの映画オモチャ箱』(晶文社) 1976
- 『銀河連邦のクリスマス』(晶文社) 1978
- 『スーパーマンが飛ぶ』(晶文社) 1979
- 『アイスクリーム戦争』(TBSブリタニカ) 1981
- 『地球儀に乗ったネコ - 耕世のコミックスワールド』(冬樹社) 1982
- 『ドナルド・ダックの世界像 - ディズニーにみるアメリカの夢』(中公新書) 1983
- 『いまアジアが面白い - マンガ・映画・アニメーション』(晶文社) 1983
- 『マンガがバイブル』(新潮社) 1984
- 『シネランドへおいでよ』(講談社) 1985
- 『中国のアニメーション - 中国美術電影発展史』(平凡社) 1987
- 『手塚治虫 - マンガの宇宙へ旅立つ』(ブロンズ新社) 1989
- 『アジアのマンガ』(大修館書店) 1993
- 『日本名作漫画館解説 SF編 2』(名著刊行会) 1997
- 『アメリカン・コミックス大全』(晶文社) 2005
- 『世界のアニメーション作家たち』(人文書院) 2006
- 『世界コミックスの想像力 グラフィック・ノヴェルの冒険』(青土社) 2011
- 『長編マンガの先駆者たち 田河水泡から手塚治虫まで』(岩波書店) 2017
共編著
[編集]- 『SF探検』(前田真一, 中子真治共著、学習研究社) 1978
- 『SFと宇宙』(大林辰蔵共著、福武書店) 1983
- 『アメリカンコミックス最前線』(小田切博共編、トランスアート、別冊本とコンピュータ6) 2003
- 『「ガロ」という時代 : 創刊50周年記念』(青林堂編、共著、青林堂) 2014
- 『アメコミ映画40年戦記 - いかにしてアメリカのヒーローは日本を制覇したか』(池田敏他共著、洋泉社、映画秘宝セレクション) 2017
- 『別冊映画秘宝 アメコミ映画完全ガイド2018』(光岡三ツ子他共著、洋泉社MOOK) 2018
海外コミックスの翻訳
[編集]- 『それゆけ! ジギー』(トム・ウィルソン、講談社) 1976
- 『ようこそジギーワールドへ』(トム・ウィルソン、講談社) 1976
- 『ちょっとセクシーベティちゃん』(マックス・フライシャー原作、講談社インターナショナル) 1976
- 『はあいベティちゃんでーす』(マックス・フライシャー原作、講談社インターナショナル) 1976
- 『ポパイ・ザ・セイラーマン』(バッド・サゲンドルフ、講談社) 1976
- 『ポパイはオリーブに首ったけ』(バッド・サゲンドルフ、講談社) 1976
- 『夢の国のリトル・ニモ』(ウィンザー・マッケイ、パルコ出版) 1976
- 『フリッツ・ザ・キャット』(ロバート・クラム、すばる書房) 1977
- 『宇宙からきたネコ』(テッド・ケイ、TBSブリタニカ) 1979
- 『ニワトリが道にとびだしたら』(デビッド・マコーレイ、岩波書店) 1988
- 『サンドマン 夢の狩人 - ドリームハンター』(ニール・ゲイマン、夢枕獏共訳、インターブックス) 2000
- 『消えたタワーの影のなかで』(アート・スピーゲルマン、岩波書店) 2005
- 『パレスチナ』(ジョー・サッコ、いそっぷ社) 2007
- 『パレスチナ 特別増補版』(ジョー・サッコ、いそっぷ社) 2023
- 『皺』(パコ・ロカ、高木菜々共訳、小学館プロダクション) 2011
- 『リトル・ニモ 1905 - 1914』(ウィンザー・マッケイ、小学館集英社プロダクション) 2014
- 『フリッツ・ザ・キャット コンプリート』(復刊ドットコム) 2016
- 『マーベルマスターワークス:アメイジング・スパイダーマン (MARVEL)』(スタン・リー著、スティーブ・ディッコイラスト、ヴィレッジブックス) 2017
- 『家』(パコ・ロカ、高木菜々共訳、小学館集英社プロダクション) 2018
光文社マーベルコミックス
[編集]- 『スパイダーマン』1 - 8(監修・訳、光文社) 1978
- 『ファンタスティック・フォー』1 - 4(監修・訳、光文社) 1978
- 『マイティー・ソー』1 - 2(監修・訳、光文社) 1978
- 『キャプテン・アメリカ』1 - 4(監修・訳、光文社) 1978
- 『ハルク』1 - 3(監修・訳、光文社) 1979
- 『シルバーサーファー』1 - 2(監修・訳、光文社) 1979
- 『ミズ・マーベル』(監修・訳、光文社) 1979
「マウス」
[編集]- 『マウス アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』(晶文社、アート・スピーゲルマン) 1991
- 『マウス2 アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語2』(晶文社、アート・スピーゲルマン) 1994
- 『完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』(アート・スピーゲルマン、パンローリング株式会社、フェニックスシリーズ) 2020
「ボーン」
[編集]- 『ボーン1(三人の旅立ち)』(ジェフ・スミス、晶文社) 1998
- 『ボーン2(グレート・カウレース)』(ジェフ・スミス、晶文社) 1998
- 『ボーン3(嵐のさなかで)』(ジェフ・スミス、晶文社) 1999
その他の翻訳
[編集]- 『コミック日米摩擦』( ローレンス・H・ビーゲルセン&ジョン・F・ニューファー編著、講談社) 1992
- 『ゴジラとは何か』(ピーター・ミュソッフ、講談社) 1998
- 『タンタンの冒険 その夢と現実』(マイクル・ファー、サンライズライセンシングカンパニー) 2002
- 『有害コミック撲滅! - アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(デヴィッド・ハジュー、中山ゆかり共訳、岩波書店) 2012
参考文献
[編集]- 『世界大百科年鑑 1977』(平凡社) 1977、81頁。
脚注
[編集]- ^ https://onokosei-biography.blogspot.com/2014/12/79.html
- ^ 『日本SF短篇50(1)』早川書房