前回の続きです。
国鉄35系気動車は外吊り扉という構造を採用しましたが、その結果いろいろと波及しました。
1.有効開口幅1200mm
踏段部は第1縮小車両限界により幅2850mmに制限されています。これを突破しないようにするため扉の下部は写真1のように薄くなっています。下枠は3.2mm厚の鋼板です。そのため、ぶらつき・脱落防止用として下枠の下端から案内ころ付の腕が突き出ており、側梁補強(下部案内を兼ねる)のП形溝に入り込んでいます。
下枠はさらに写真2のように、戸先ゴム取付部位の確保も兼ねた構造で補強されています。しかしこの下枠補強のために引残りが生じ、車体構体開口寸法1300mmに対して客室扉の有効開口幅は1200mmになってしまいました。
2.複雑な開閉機構
一般的な構造の扉であれば、その開閉機構は戸袋などの車内に納まります。ところが外吊り扉になると扉自体が車外にあるわけですからそう簡単ではありません。戸閉め機械は踏段の内側(車両中央寄り)にあり、回転力を写真3のような機構で開閉てこに伝えます。開閉てこの回転軸は戸柱部を貫通して車外に出ており、扉の溝から扉内部に入り込んでいます。車外に突出した開閉てこ回転軸を露出させないために扉は幅が広くなっており、さらに戸尻ゴムで車体外面とのすきまをなくして風雨の吹込みを防いでいます。
写真4は車内から見た状態ですが、扉の下部に凹部があるのは、開閉てこが入り込んだりころで案内されたりするためのものです。見た目にあまり美しくありません。
とにかく巧妙な構造です。保守はたいへんだったことでしょう。
3.客室扉脇に余裕がない
客室扉の脇にはだいたい乗客が立つものです。そのため、ロングシートは客室扉開口部から少し離すのが一般的ですが、35系気動車はそうなっていません(写真4参照)。多数の乗客が乗降する際はあまり好ましくない配置ですが、開閉てこ回転軸とそれを動かす機構をロングシートで隠しているので、このような配置にせざるを得ません。
…という具合に、踏段有無という条件が異なっただけで構造と外観がこうも変化してしまったのでした。
以上
さかてつでした…