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素顔のオオサンショウウオ
滝をよじ登り、雌を迎える巣穴を探し、卵の世話までする。オオサンショウウオの命をつなぐ雄たちの奮闘を、写真家の福田幸広が6年かけて撮影した。
岡田純さんは鳥取大学の大学院生だった2001年以降、日野川とその支流で600匹を超すオオサンショウウオに識別用のマイクロチップを埋め込み、個体ごとに行動や成長を記録している。オオサンショウウオは国の特別天然記念物に指定されているため、調査に当たっては文化庁や県の許可が必要だ。
オオサンショウウオ科には、ヨーロッパで出土した数千万年前の化石種のほか、3種の現生種がいて、それぞれ日本、中国、米国に生息する。「ハンザキ」とも呼ばれる日本のオオサンショウウオは世界最大級の両生類で、岐阜県より西の本州と、四国と九州の一部に生息することが知られている。しかし、環境省が絶滅危惧種に指定しているものの、全国の生息数を推定したデータはない。特別天然記念物として保護されていても、文化庁が生息状況を把握しているわけではなく、調査や研究は主に在野の研究者に委ねられているのが実情だ。
オオサンショウウオの生態は謎だらけ
オオサンショウウオには、生態や寿命など、解き明かされていない謎が多い。生息状況の把握も大切だし、調査が次世代に受け継がれる仕組みも必要だ。一方で、川では砂防ダムの建設や護岸整備がどんどん進み、オオサンショウウオが産卵に適した巣穴を見つけにくくなっている。京都などでは、中国種との交雑の問題も出てきた。
岡田さんがマイクロチップを埋め込んだ600匹余りのうち、再び出会った個体は半分以下の285匹。最長で12年ほど追跡できている個体はいるが、何十年も生きるといわれるオオサンショウウオの寿命を正確に調べるには、こうした地道な調査を次世代の研究者に引き継ぎながら続けていかなければならない。
しかも岡田さんには、14年間の調査で集めた膨大な量のデータがある。現在、砂防ダム(堰堤)が繁殖期の雄や雌の移動に及ぼす影響を調べた研究をまとめているところだが、それ以外にも複数のテーマを抱えている。「体が動く限りは研究を続けていきたい」と岡田さんは言うが、仕事の量を考えると、フィールド調査からデータの解析、論文の執筆までを一人きりでこなすのは難しそうだ。チームで取り組む必要性を感じてはいるものの、これまでのところ適切な人材は見つかっていない。
※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年6月号でどうぞ。
今回、鳥取県日南町に取材に行って知ったのですが、写真家の福田幸広さんは町ではすっかり人気者になっています。町の人たちに「福ちゃん」と呼ばれて慕われ、町の施設には福田さんの作品を展示した部屋まであります。今年3月末から5月に東京で福田さんの写真展が開催されたときには、日南町から10人を超える人たちが会場に来ていました。出会った人との関係を大切にする温かい人柄の持ち主だからこそ、動物たちも福田さんには心を許して、近づかせてくれるのでしょう。
自然のなかで見ると、オオサンショウウオはとてもかわいく見えます。私のお気に入りは、滝壺で巣穴に入ろうと奮闘する雄の写真。愛らしいオオサンショウウオたちの姿を、写真ギャラリーでたっぷりお楽しみください!(編集T.F)