旅先でぐっすり眠るコツ、もしも不快なベッドやエアコンだったら

科学的根拠に基づき今注目の「スリープツーリズム」の専門家が紹介

2025.02.05
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旅行先で快適な睡眠を確保するのは簡単ではない。(Photograph by Flora Hanitijo)
旅行先で快適な睡眠を確保するのは簡単ではない。(Photograph by Flora Hanitijo)
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 宿泊の目的がレジャーであれ仕事であれ、ホテルというものはときに睡眠を提供するビジネスだと信じられなくなることがある。不快なベッド、うるさいエアコン、ドアをバタンと閉める音、上階の騒がしい宿泊客など、自宅とは異なるさまざまな要因に悩まされながら安眠を得るのはそう簡単なことではない。

 米ハーバード大学医学部の助教で、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の準研究員でもあるレベッカ・ロビンズ氏は、睡眠の重要性をよく理解している。氏は、睡眠と概日(かいじつ)リズムの健康を改善する行動を研究しており、ホテルでの睡眠の質にも自然と興味を持つようになった。

 学術誌「Tourism and Hospitality Research」に発表された2020年の研究で、ロビンズ氏らは、旅先で満足した睡眠が取れたと答えた人は3人に1人にとどまる一方、睡眠は宿泊体験の全体的な満足度を決める重要な要素であることを明らかにした。

 良質な睡眠を目的とした「スリープツーリズム」が注目を集め、ホテルが睡眠という課題に対して真剣な取り組みを始める中、ロビンズ氏は現在、睡眠の専門家として、ヒルトンホテルで寝室のデザインや「睡眠リトリート(日常を離れて心身を癒やすこと)」などの睡眠戦略に携わっている。以下に、ロビンズ氏が推奨する、科学的根拠に基づいた旅行中によく眠るためのヒントを紹介する。(参考記事:「発達障害の症状をやわらげる観光施設が続々、シンガポール」

1. 慣れない場所に慣れたものを

「端的に言うならば、慣れない環境においては、われわれは基本的にリラックスしにくくなります」とロビンズ氏は言う。音であれにおいであれ、何か新しいものを感知すると、脳はホテルの部屋を未知の領域として警戒するようになるからだ。(参考記事:「枕が変わると眠れない、意外と大きな影響と対策」

 ポジティブな連想をもたらすにおいは、幸福感を引き起こすことが科学的に証明されている。2024年に医学誌「JAMA Network Open」に発表された研究では、なじみのあるにおいはネガティブな思考サイクルを断ち切り、うつ状態を克服するのに役立つことが示されている。

 心地よい音もまた、心を落ち着かせ、リラックスを促す。神経系を落ち着かせる小川のせせらぎや暴風雨の音を出す機器も存在するが、うるさいエアコンをはじめ、騒がしい環境での睡眠にはホワイトノイズ(すべての周波数を均等に含む音)も有益だ。

 においや音など、ホテルの部屋に自宅のような慣れ親しんだ感覚をもたらす手段を見つけよう。キャンドルはホテルでは使えないため、お気に入りの香水やローション、エッセンシャルオイルを持参して、温かいシャワーのあとに使ってみるのもいいだろう。ホテルによってはホワイトノイズを発生させる機器を導入しているところもあるが、もしそうしたサービスがない場合には、自分でポータブル機器を持参しよう。

【2025/2/6開催】
【2025/2/6開催】
三島和夫先生のウェビナーを2025年2月6日(木)に開催いたします。テーマは働く世代が知っておきたい「睡眠の新常識」。参加者からの質問にお答えするコーナーもありますので、睡眠について常々抱いている疑問やお悩みをぜひお寄せください。開催概要や参加方法(有料)はこちらです。

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