黒より黒い「超黒」をまとったハチが見つかる、異名は“ウシ殺し”

さまざまな動物で別々に進化した、生きものたちの色の謎を追う

2025.02.06
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アリバチの仲間Traumatomutilla bifurcaの体の黒い部分は、従来より反射率が低い「超黒」であることが新たな研究で明らかになった。(Photograph By Piemags/nature / Alamy)
アリバチの仲間Traumatomutilla bifurcaの体の黒い部分は、従来より反射率が低い「超黒」であることが新たな研究で明らかになった。(Photograph By Piemags/nature / Alamy)
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 ブラジルの熱帯サバンナに生息するアリバチ(Traumatomutilla bifurca)のメスは、体の色は黒と白で、翅を持たず、ミニチュアパンダのように見えなくもない。しかし、いくらもふもふしているからといって、この小さなケモノに鼻をこすりつけてすりすりしてはいけない。強力な毒針を持つこのハチは、地元では“ウシ殺し”と呼ばれている。

 最新の研究で、このアリバチの体の黒い色は見かけ以上に複雑であることが明らかになった。光がアリバチに当たると、体を覆う剛毛によって散乱し、真っ黒い毛に吸収される。その結果、反射する光はわずか1%に満たない。この研究は、2024年12月2日付けで科学誌「Beilstein Journal of Nanotechnology」に発表された。

 つまり、アリバチの色はただの黒ではない。科学者たちはこれを、「超黒」「スーパーブラック」などと呼ぶ。ブラジル、トリアングロ・ミネイロ連邦大学の昆虫学者で論文の最終著者であるハイナー・ギレルモ・フェヘイラ氏によれば、従来の黒は、光が当たるとその5~10%を反射するという。

 自然界では珍しいとされているが、興味深いことに、超黒はクモ、昆虫類、爬虫類、鳥類、魚類など、互いに近縁ではない動物グループのなかで何度か進化してきたようなのだ。

 肉眼では超黒かどうかの判断ができないため、その例を見つけ出すのは運任せという面もある。

「99%の動物を測定していると、黒、黒、黒、黒、黒、黒、そして突然超黒の種が見つかったりします」と、ギレルモ・フェヘイラ氏は言う。

 単に進化のねじれというだけでなく、超黒の研究は、ソーラーパネルや画像技術の進歩にもつながるかもしれないと、科学者たちは期待する。(参考記事:「世界一黒い触れる素材、「至高の」暗黒シートを開発、産総研など」

毒針キケン、要注意

 自然界で超黒の例が相次いで発見されている今、次に理解すべきは、それにどのようなメリットがあるのかということだ。

 アリバチの幼虫には、特定の種のハチに寄生する習性がある。メスが他の種の巣に侵入して、無防備な幼虫やサナギの体に卵を産みつける。

 標的を探してアリバチが地面を歩き回っているときには、体が敵から丸見えになっている。メスが強力な針を持っているのはそのためではないかとギレルモ・フェヘイラ氏は考えている。そして、スカンクや一部のハチのように、黒と白の体色は、毒針を持っていることを知らせる警告色ではないかと論文で主張した。

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