変幻自在、軽やかにしなやかに──“チアパンク”バンド、ニーハオ!!!! 新体制後初のフル・アルバム『FOUR!!!!』
変則4人編成“チアパンク”バンド、ニーハオ!!!!が4枚目となるフル・アルバム『FOUR!!!!』をリリース! ミニ・アルバム『PAYDIRT』やカセット・テープでのリリースを間に挟みつつ、フル・アルバムとしては5年ぶりとなる今作。前作『NO RESPECT』と同様に〈Less Than TV〉主宰である谷ぐち順がプロデュースを手がけ、特殊ロックンローラー、クラーク内藤によるトラックを使った楽曲など、全14曲24分にさまざまな展開を盛り込みまくった痛快なアルバムに。OTOTOYではインタヴューをお届けするとともに、リリースよりも少しだけ早く配信がスタートしたので、インタヴューとともに音源をチェック!!
新体制初、4枚目のフル・アルバム、その名も『FOUR!!!!』
INTERVIEW : ニーハオ!!!!
ベース、左ドラム、右ドラム+サンプラー、ギターという変則的な4人編成で、国内外でチアフルかつハイテンションなライヴを繰り広げる“チアパンク”バンド、ニーハオ!!!!が4枚目のフルアルバム『FOUR!!!!』をリリース。その内容はまさにライヴの熱気がダイレクトに伝わってくる、ニーハオ!!!!史上最もアグレッシブでハードコアな仕上がりとなっている。
OTOTOYではオリジナルメンバーであるRED ARIKOとBLUE YUKARI(Limited Express (has gone?))、2016年加入のYELLOW MIWAKO(ex.THE LET'S GO’s)、2018年加入で本作がニーハオ!!!!での初レコーディングとなるPURPLE KAORI(LisaloomeR)を迎え、初のメンバー全員インタヴューを実施(※京都在住のARIKOは時勢を鑑みSkypeで参加)。アルバムの制作エピソードはもちろん、メンバーチェンジの影響からニーハオ!!!!というバンドのあり方まで、たっぷりと話を聞いた。
インタヴュー&文 : 須藤輝
写真 : 小野由希子
ライヴ感のある音源をずっと作りたかった
──僕はニーハオ!!!!のライヴをいつも楽しく拝見しているのですが、『FOUR!!!』はそのライヴのノリや勢いをそのままパッケージしたようなアルバムですね。
BLUE YUKARI(以下、YUKARI) : 今回はそれを目指したというか、ずっと目指してたんですよ。ニーハオ!!!!は4人編成になってからCDを2枚とカセットを1本出してるんですけど、ライヴ感のある音源を作れなくて。例えば普通のドラム・セットで録るときって、エアマイクを何本も立てるじゃないですか。それで残響とかをだいぶ拾ってると思うんですけど……。
──ああ、ニーハオ!!!!はフロアタムをYUKARIさんが、スネアとハイハットをARIKOさんがそれぞれ担当していて、かつバスドラがないから。
YUKARI : なんか空気感のない仕上がりにしかならなくて。だからミックスのときにローファイ・オルタナみたいな感じに寄せていくのがベストな方法だったんですけど、今回は初めてそのままいけたんちゃうかなって。
RED ARIKO(以下、ARIKO) : YUKARIさんはレコーディングのときも「ライヴに近い音源にしたい」みたいなことをちょっというてたんですけど、その通りになったなあと思いました。
PURPLE KAORI(以下、KAORI) : そうだね。
YELLOW MIWAKO(以下、MIWAKO) : うんうん。
YUKARI : ただ、それはそれで「だったらライヴ行けや」って話じゃないですか。ライヴを目指した音源とライヴだったら、ライヴのほうがいいに決まってるし。だからライヴの感じをそのまま出すのか、それとも音源でしかできないことをやったほうがいいのか、はたまた両者をいい感じに折衷できないかとか、毎回めっちゃ悩むところではあるんです。
──それでいうと、3rdアルバム『NO RESPECT』(2015年3月リリース) は「音源でしかできないことをやった」アルバムですね。
YUKARI : そうなんです。でも『NO RESPECT』も本当はもっとライヴっぽくしたかったんやけど、やっぱり音の録れ具合とか、あとARIKOとYUKARIでドラムを分けるっていうのを始めたばっかりだったから。
ARIKO : なんか、いろいろ追いついてなかった。
YUKARI : ね。このときはベースもギターも海外のメンバーやったからほとんどスタジオにも入れなくて。満足に練習できないまま録音したから、頭の中で鳴ってる音と録れてる音が違ったっていう。
ARIKO : そうそう。
YUKARI : だったら音源として作り込もうと方向転換した結果、ああなったんですよ。でも今回は、ミーちゃん(MIWAKO)とKAORIちゃんがほっといてもすごい楽しそうに……いや「ほっといても」っていったらアレやな。とにかく今のニーハオ!!!!は2人がいい感じに成立させてくれるから。
KAORI : 私は前からニーハオ!!!!のことは知ってたし、対バンしたこともあったから、自分なりのニーハオ!!!!のイメージがあるんですよ。それを持ってレコーディングに臨んだので……。
ARIKO : やだ、KAORIちゃんマジメ。
YUKARI : どんなイメージ?
KAORI : まずね、ベースのバンドっていうイメージだったの。それは昔から知ってる人ならみんな思うでしょ? そのベースを軸にコーラスがたくさん入って、しかもドラムもセパレートで独特のリズムがあるじゃない。だから私はギターだけど、自己主張するよりも、どうしたらベースとリズムを引き立てられるかとか、そういうことを考えてます。
YUKARI : なんか新鮮です。KAORIちゃんがなにを考えてニーハオ!!!!やってるとか、あんまり聞かないので。ミーちゃんは?
MIWAKO : 私は、すごい自然な感じでやれてます。YUKARIさんが考えてくれるベース・ラインにも納得がいくし、すんなり弾けるんですよ。そもそもアリちゃん(ARIKO)とYUKARIさんがいて「ニーハオ!!!!ってこういう感じ」っていうのがあるんで、それに私も気持ちよく乗っかっていけるみたいな。
──ARIKOさんから見て、KAORIさんとMIWAKOさんはどんなメンバーですか?
ARIKO : ええと、最高のメンバーやと思います。
YUKARI : ひどい(笑)。アリちゃんに難しいこと聞いちゃダメなんですよ、なんも考えてないから。
ニーハオ!!!!が目指すのは、天岩戸の前で踊るアメノウズメ
──ニーハオ!!!が今の編成になったのは音源でいうと先ほどの『NO RESPECT』から。以降、編成はそのままですが、ベースとギターのメンバーは変わっています。その影響は感じますか?
YUKARI : 感じます。というか、ミーちゃんとKAORIちゃんがほかのバンドでやってきたことを見てるし、それはYUKARIとARIKOの引き出しにはないものだったりするんですよ。だから、例えばミーちゃんはTHE LET'S GO’sでボーカルもやってたから、もっとミーちゃんが歌える曲を作ろうとか。今回のアルバムでいえば“ちょちょちょちょ”がそうやし。
MIWAKO : そうでしたね。歌のパートをいっぱいもらいました。
YUKARI : KAORIちゃんが加入してからは「KAORIちゃんのノイジーなギターがこんな感じで入ったらいいな」みたいに考えてて、“What I want”とか“My proud”はめっちゃそれを意識してますね。
KAORI : YUKARIちゃんに「ハードコアっぽい速い曲を弾いてほしい」っていわれたときは、「今までのニーハオ!!!!にはあんまりそういうのなかったな」「私が入ったからそういう曲ができたのかな」って思った。
YUKARI : 「KAORIちゃん、ハードコア好きやろ? 弾きたいやろ?」みたいな。そうやってメンバーが変わるたびに、それまでのメンバーじゃできなかったことをかなり意識的にやろうとしてたんですけど、今はもう慣れたというか。もうミーちゃんのベースとKAORIちゃんのギターがニーハオ!!!!のカラーになってるから、意識せずとも自然とできてる気がします。
KAORI : 私はニーハオ!!!!のレコーディングは今回が初めてだったんですけど、あれが新鮮だった。“MATSURI-SHAKE”と“FUTURE”の2曲。
──いずれもクラーク内藤さんが作られたトラックですね。特に“MATSURI-SHAKE”を初めてライヴで聴いたときは「イカれてる」って思いました。ガバで盆踊りをやっているような。
YUKARI : ねえ。自分たちだけではできひんかった曲。
──どういう経緯でこの2曲は生まれたんですか?
YUKARI : たぶん、そろそろアルバムの構想を練りたいなと思ってたときに……なんやったかな?
MIWAKO : “FUTURE”は、たしかアイスクリームの曲が先にあったでんすよ。
ARIKO : あー。
KAORI : あったあった。
YUKARI : そう。アメリカ西海岸の、ベニス・ビーチのあたりをローラースケートですいすい滑ってる感じのティーンエイジャーの女の子がアイスクリーム屋さんでバイトしてるっていう、めちゃめちゃポップなイメージの曲を作りたかったんですよ。でも、いざ書いてみたらいまいち……。
ARIKO : うまくできひんかった。
YUKARI : それで保留にしてたのを内藤さんに渡したんかな。で、返ってきたのを聴いたらめっちゃ変貌してたっていう。
トラックを提供しているクラーク内藤の作品『終わってる歌』
KAORI : “FUTURE”は一番ポップじゃないよね。
YUKARI : しかも歌詞も「CHINA」だし。西海岸のアイスクリーム屋の曲だったはずが、なぜか中国の曲になってしまったな。
MIWAKO : その間に中国ツアーもやってたから。
YUKARI : そうそう。ツアー中にせっかくやし歌詞も書こうみたいになって、中国に引っ張られたんやろな。でもなんで内藤さんに曲をお願いしたんやったっけな……。まあ、内藤さんは「ニーハオ!!!!はゴルいから一緒にライヴやりたい」ってめっちゃ言ってくれてたんやけど。
──“MATSURI-SHAKE”のことはなにか覚えてます?
YUKARI : まず、内藤さんがニーハオ!!!!に対して持ってくれてたイメージと、YUKARIの「ニーハオ!!!!はこうありたい」みたいなイメージが一緒だったっていうのがあって。それはなにかというと、天岩戸に隠れてしまった天照大神を外に出すために岩戸の前で踊るアメノウズメなんですよ。要は、外でどんちゃん騒ぎすることで、なんかつまんなそうにしてる人もチラッと見て「面白そう」って思わせるようなバンドを目指したくて。それを私、なんかの曲で歌詞に書いてたんかな。
MIWAKO・KAORI : 「天照大神も出ておいで」……?
YUKARI : そう、“AHAHA-A-N”の歌詞や。それに対して内藤さんが「僕もそう思ったんですよ」と言ってくれて「じゃあ、お祭り騒ぎにしましょう!」みたいな感じで作ってもらったのか。そうそう、思い出した。私は天岩戸の話がめちゃくちゃ好きで。アメノウズメは素っ裸で踊るような女の神様なんですけど、裸踊りはアリちゃんが担当するとして、そういうちょっとおふざけもありつつ魅力的な存在に憧れるんですよね。
ARIKOとYUKARIではメロディのある曲は作れなかった
──ほかにアルバムの曲作りやレコーディングで印象に残っていることはありますか?
KAORI : さっきも言いましたけど、ニーハオ!!!はドラムが独特じゃないですか。あれにギターを合わせるのが実は結構大変で。
ARIKO : すんません。
KAORI : いやいや、私もそれがおもしろいと思ってやってるからいいの。ただ、ライヴだとみんなの顔も動きも見えるから合わせられるんだけど、スタジオで私が1人でギターを重ねてたときに……。
YUKARI : あれはつらかったね。
KAORI : なかなか合わせられなくて。YUKARIちゃんにスティックでカウントをとってもらったりしてたよね。でも、最後の曲の“SPIDER13”では、カウントなしで合わせられたんですよ。
YUKARI : 「1人でできた!」みたいな(笑)。
KAORI : それがすごい感動的で、一番印象に残ってるかも。
ARIKO : KAORIちゃんが一所懸命ギターを弾いてるときに、私とミーちゃんと谷さん(谷ぐち順、『FOUR!!!!』のプロデューサーで〈Less Than TV〉主宰)とエンジニアのSHIGEさんで「自分の一番お気に入りのおやつはなにか?」っていう話をずっとしてたんですよ。
YUKARI : そんな話してたな(笑)。
KAORI : アリちゃんのお気に入りのおやつはなんなの?
ARIKO : 私のお気に入りはツイックスっていう、めちゃ甘いスニッカーズみたいなチョコ菓子。
YUKARI : 「チョコ菓子」って、おばちゃんの言い方やん。
──あれ? 「チョコ菓子」って言いません?
YUKARI : 言う?
MIWAKO : 自分で言ったことはないです。
KAORI : 言わないね。
YUKARI : だってチョコレートの時点でもうお菓子やん。
ARIKO : いやいや、チョコレートは「チョコレート」やん。
──例えばアルフォートとかって、「チョコ菓子」って言わなきゃいけない感じしません?
ARIKO : そうそうアルフォート。
YUKARI : なるほどね。チョコだけで構成されてないお菓子ってことね。なんの話やったっけ?
ARIKO : あの、一応マジメな話もしとくと、私はレコーディングだと欲が出てしまうんですよ。ライヴと違って何回でも録り直しとかできるじゃないですか。だから「ドラムがもうちょいうまく噛み合うように録り直しません?」ってSHIGEさんに相談したら「でも、あまりにも噛み合っちゃうと、せっかくドラムを2つに分けてるよさがわかりにくくなるよ」みたいに言ってくれはって。むしろちょっと凸凹してる感じがいい方向に作用することもあるんやな、なるほどやんなあって思いました。
YUKARI : それはたしかにあるかも。世の中には「ほんまに最高やな!」って思わせてくれるドラマーがいっぱいいるじゃないですか。その人たちが、ニーハオ!!!!のへなちょこなドラムを見て「羨ましい」と言ってくれるのを聞いたりするとめっちゃ嬉しいし、これは1人じゃできひんなって思う。
──先ほどYUKARIさんはMIWAKOさんのボーカルを生かす曲として“ちょちょちょちょ”を作ったとおっしゃいましたが、同曲や“ステラ・ルー”の歌モノっぽいコーラスも新鮮だったんですよね。
YUKARI : うんうん、メロディがちゃんとあるような。“ステラ・ルー”もミーちゃんが入ってから「ミーちゃん歌いなさい」と思って作ったやつよね。
MIWAKO : 私はニーハオ!!!に入るまでメロディがない感じの曲をやったことがあんまりなかったから、むしろ“ステラ・ルー”とかのほうが慣れてる(笑)。
KAORI : 私は逆だ。歌モノは全然やったことがないから(笑)。
MIWAKO : TONGちゃんていう、内藤さんの奥さんで私が前にいたTHE LET'S GO’sのマネージャーをやってくれてた人がいるんですけど、彼女に「“ステラ・ルー”はミーちゃんが作ったの?」って言われたんですよ。だから、YUKARIさんもそういうイメージで作ってくれたのかなあなんて。
YUKARI : 正直、私とARIKOやったらそういうメロディのはっきりした曲は、たぶん小っ恥ずかしくてできひんかったと思うんです。
ARIKO : わかる。なんか、「こいこい!」みたいな感じになっちゃいそう。
YUKARI : なにそれ(笑)? とにかくメロディのある曲って恥ずかしいんですよ。だけどミーちゃんがおったら恥ずかしくなくできる。
KAORI : 私も初めて“ステラ・ルー”を聞いたとき、すごくいいメロディだなあって思った。
──ライヴでもめっちゃ盛り上がりますもんね。
YUKARI : やっぱ、みんなそういうの好きやねんな(笑)。
深く考えすぎないようにするにはどうしたらいいかを考えてる
──YUKARIさんは去年、Limited Express (has gone?)のアルバム『perfect ME』リリース時のインタヴューで「以前は音楽と生活は別モノだったけど、今は音楽が自分の人生とリンクしてる」とおっしゃっていました。
YUKARI : はいはい。
──ニーハオ!!!!に対しても同じことが言えますか?
YUKARI : 言えると思います。ただ、ニーハオ!!!!に関しては、社会とか時代とかそういうものを俯瞰しながら、あんまり感情的にならずに、でも感情的な音楽をやりたいというか……。なんか、うまくしゃべれてるかわからへんけど、このバンドは「女の子同士でわいわいできたらいいな」っていうのが根底にあって。そのうえで、昔は新しい音楽を作ることにすごい集中してたと思うんです。それが、だんだん自分たちが自由に生きていくための手段としてニーハオ!!!!という装置を動かしていくような感じが出てきたかもしれないですね。
『perfect ME』リリース時のインタヴューはこちら
──僕は“攻撃の要”を初めてライヴで聴いたときにめちゃくちゃ感動しまして。例えばセクシズムとかレイシズムとか、あるいはホモフォビアでもなんでもいいんですけど、そういうクソみたいなもの全般に対する「攻撃の要」がニーハオ!!!!であると、勝手に解釈したんですよね。
YUKARI : うんうんうん。やっぱりそれはそうですし、歌詞の方向性でいえば“きみはButterCup”とかもそうだと思うんですよ。ただ、「攻撃の要」とは言ってるけど、歌詞にも「パイロキネシス」とか「テレパシー」とかあるように、そんな力いっぱい攻撃するというよりは、もうちょっとこう……。
──軽やか?
YUKARI : そう。軽やかにしなやかに、ジャンプとかしながら敵を跳ね除けていく、そんなイメージで。あと「こうしなきゃいけない」とか「こうしなさい」って押し付けるんじゃなくて、「こんな楽しい方法もあるよ?」みたいに提示できたらいいなと。まあ、わざわざ声に出さずとも、単純に女性4人でバンドをやってること自体がなんらかのメッセージになると思ってもいるんですけど。
──それも聞きたかったんです。僕は「ガールズ・バンド」という言葉をあまり積極的に使いたくはないのですが、ガールズ・バンドとしてのニーハオ!!!!のあり方って、どう考えています?
YUKARI : もちろんニーハオ!!!!がガールズ・バンドであることはめっちゃ意識してるんですけど、今言ったように戦ってどうこうするというよりは、わいわい楽しく自由な感じが体現できてたらいいなって。だから深く考えすぎないようにするにはどうしたらいいかを考えてる、みたいなところがあるかなあ。
MIWAKO : ニーハオ!!!!には、私も軽やかさをすごい感じます。なんか飄々としてますよね。
YUKARI : なんにでもなれるし誰とでもできるみたいな、変幻自在な感じ。それがたぶんニーハオ!!!!のあり方にも繋がってると思いますね。いや、ほんまに思ってんのかな? 流れで言うただけちゃうかな(笑)。
ARIKO : あはははは(笑)。
KAORI : 必死にがんばって、努力して壁を乗り越えるというよりも、ひょいっと飛び越えるみたいな。無理しない感じはあるね。
──ARIKOさんはいかがですか?
ARIKO : えっ、なにが?
YUKARI : だからアリちゃんはなんも考えてないんですって(笑)。
MIWAKO : アリちゃんが一番飄々としてる(笑)。
YUKARI : そう。やっぱり私もなんだかんだで考えすぎちゃうんですよ。でも、ARIKOに相談したら全部「まあ、いっか」って、どうでもよくなる(笑)。
ARIKO : ひどくないですか?
YUKARI : いや、これたぶんめっちゃ大事なことやから。そう、私が「次はこういう方向性の曲を作ったほうがええんかな」とか、自分の中で答えが出えへん問題をアリちゃんに投げたら「YUKARIさんはなにが一番楽しいと思う?」って返してくるし。だから、ニーハオ!!!!のキーパーソンはARIKOなんやって。
KAORI : そっか、納得いった。
MIWAKO : そんなアリちゃんとYUKARIさんのバランスが絶妙だなって、いつも思ってます。
KAORI : アリちゃんは誰も思いつかないようなアイデアを持ってきてくれるから、それを聞くのも楽しみ。
YUKARI : だいたい20個ぐらい持ってきて、1個採用されるかされへんかぐらいの確率ですけどね。最近はARIKO案が採用されたらびっくりしてるもんな。
ARIKO : 1個目に出したやつがいきなり採用されると逆に「みんな大丈夫かな?」って思う。
買えたの辛いピーナツだけ!
──今回のアルバムで採用されたARIKOさんのアイデアは?
YUKARI : 今回に限らずですけど、ボーカルのめちゃくちゃな掛け合いとかはほとんどARIKOが考えてます。だいたい「それはちょっと無理じゃね?」ってなるけど。
ARIKO : なんか、歌詞を反対されるんですよ。ミーちゃんに「そんな掛け声は嫌です」って言われました。
KAORI : あったね、そんなこと。
MIWAKO : 「そい!」はやだ。
KAORI : でも「そい!」はやだけど、「ぽい!」はいいんでしょう?
MIWAKO : 「そい!」はちょっと、鉢巻きしてる感が(笑)。
YUKARI : あと、アルバムの曲だったら“No Time”は爆笑しながら録ったよね。1人ずつセリフを言うパートがあるんですけど、アリちゃんなんて言ったんだっけ?
ARIKO : 買えたの辛いピーナツだけ!
YUKARI : そうや(笑)。そんな歌詞、普通ないでしょ?
MIWAKO : アリちゃんはいつもレコーディング本番でめっちゃすごいの出してくるから。今まで聞いたことがない一番すごいのを。
KAORI : 言い方もすごいんだよね。レコーディングで大笑いして、家に帰ってからもまだ笑ってたもん。
ARIKO : この曲は、たしかYUKARIさんからざっくりとした流れが送られてきたんですよ。で、「ここでARIKOがなんか言う」「ここでミーちゃんなんか言う」とかメモってあって、それぞれなに言うか考えてくるようにって。
YUKARI : “No Time”も中国ツアーのあとにできた曲なんですけど、なんで“No Time”かというと、ツアー中にほんま時間がなかったからなんですよ。
KAORI : ごはんすらなかなか食べれなかったよね。
YUKARI : ツアーに行って美味しいものを食べるのが大好きなKAORIちゃんが「おなか空いた。ごはんまだ?」って泣きそうになってな。だからアリちゃんの「買えたの辛いピーナツだけ!」はお土産すらロクに買えなかったってことなんですけど、次のミーちゃんは「ミーちゃんなんか言う!」ってそのまま言ってるしな。
ARIKO : 「それでええんちゃうの?」ってなって。
──そうした掛け声や、目まぐるしい掛け合いの応酬から生まれるチアフルさもニーハオ!!!!の持ち味ですよね。ところで「チアパンク」って、どなたが言い出したんですか?
ARIKO : あれは、私がすごいチアリーダーが好きで、生まれ変わったらチアリーダーになりたいんですよ。
YUKARI : めっちゃスクールカーストの頂点やん。
ARIKO : せやろ? チアリーダーの掛け声を参考にしてるからああなっちゃうんですよ。で、そういうマインドでいてたら、『NO RESPECT』のときのメンバーだったJAZMINとJENNIFERっていうLA在住の双子が「ニーハオ!!!!ってチアフルだよね」「チアパンクだね」みたいなことを言ってくれて、「ぴったりやん!」と思ったんです。だから「チアパンク」の名付け親はJAZMINかJENNIFERよな。
YUKARI : だと思う。本当にアリちゃんは「チアリーダーの掛け声を見て研究してくるわ」って言ってて、作ってきた掛け声に対してミーちゃんが「嫌です」みたいな(笑)。
MIWAKO : ですね(笑)。
YUKARI : たしかにチアリーダーは「そい!」は言わんよな。でも、しみったれてないほうがいいじゃないですか。
ARIKO : あー、それはあるな。特に最近は「しみったれたこと言うなよ」っていう場面がいっぱいあるし。
YUKARI : 正直、私ね、今日ここに来るまですごい気が滅入ってたんですよ。ライヴはできひんし、じゃあ今やれることを、つまり曲を作ったりアイデアを練ったりすればいいと思っても、全然やる気が湧いてこなくて。でも、ほらね、こういう人たちがいるから元気になるじゃないですか 。
MIWAKO : うん。
KAORI : アリちゃんも元気ー?
ARIKO : 元気だよー。
YUKARI : だから私はこのメンバーに元気をもらってる……っていう言い方はかっこ悪いけど、その感じが音にも出てたらいいなとは思ってて。それが、もしかしたらニーハオ!!!!なりの生活と繋がってる音楽なのかもしれないですね。スタジオ入ってみんな笑い疲れて帰るとか、なんならレコーディングで達成感を得たというよりも、ただ笑ってた記憶しかないみたいな。そういうのが音に出てたら、めっちゃ「チア」じゃないですか。
編集 : 高木理太
『FOUR!!!!』のご購入はこちらから
過去作はこちらにて配信中
LIVE SCHEDULE
〈ニーハオ!!!! 『FOUR!!!!』 Release Party 〜Ni-HAO!!!! BOWL オンライン〜〉
2020年4月29日(水・祝)@下北沢THREE
START : 15:00〜
オンライン・チケット : ¥500
(投げ銭可能、売上はTHREEへのドネーションとなります)
生配信ワンマン・ライヴ(トーク・タイムあり)
チケットの購入、配信のURLはこちら
(チケットを購入されたかたは当日の生配信とアーカイブ視聴が4/30(木)〜5/6(水)まで可能です。)
PROFILE
ニーハオ!!!!
関西出身、ガールズ"チアパンク"バンド、ニーハオ!!!!
ツインベース+ドラムの3ピースでスタートし、山本精一のUMMO RECORDSよりデビュー。その後、編成を変えつつも2枚のアルバムをNYの奇才ジョン・ゾーンのレーベルTZADIKよりリリース。オーストラリアからも音源発表。 世界中を魅了する。2014年、LA在住メキシコ系アメリカ人の双子が加入し、ギター・ベース・左ドラム・右ドラム+サンプラーという唯一無二の変則4人編成になる。どこのだれが言いはじめたのか「チアパンク」、まさにそんな感じ!
双子卒業後はオリジナルメンバーRED ARIKO、BLUE YUKARI(Limited Express(has gone?))に、日本人メンバー、YELLOW MIWAKO(ex.THE LET'S GO'S)、PURPLE KAORI(LisaloomeR)を迎え、 4女子での快進撃を続ける。2枚のアルバムリリースを経て、 2017年12月にはマレーシアでのカセットテープ音源をリリース。近年は、マレーシア・シンガポール・中国などアジアツアーもどんどん敢行。ライヴイベントの賑やかし屋。 絶対必見!
Official HP : https://ni-hao-ni-hao.jimdofree.com/