「小倉唯」を始めた日
私は、小倉唯が大嫌いだった。もはや憎かった。
その理由は簡単で、彼氏が小倉唯を大好きだからである。
ツイッターなどで小倉唯さんを目にするたびに「小倉唯さんは小柄で顔も声もかわいくてスタイルも良くてフリフリが似合って踊れて仕事も頑張ってて勉強もできてなんでも完璧なのに、私ときたら……」とめちゃくちゃ落ち込んだ。
私は顔はブスだし声もかわいくないしフリフリは似合わないし大学はFランだしこれと言った特技も芸もない本当に何も無い女だ。小倉唯さんに勝てるものと言えば年齢くらいである。いや年齢なんて先天的なもので勝っても……
彼氏の理想の女の子が小倉唯さんなら私は一生それには近づけない。小倉唯さんは、「女の子」として完璧すぎる。アンドロイドのようである。小倉唯さんみたいな女が好きなのに、何故彼氏は私を選んだんだ? いつか幻滅されて捨てられるのではないか?
などと思って小倉唯さんが嫌いだった。嫉妬していた。
なるべく小倉唯さんを視界に入れたくなくて「唯」をミュートワードにしていたくらいである。
【追記】
確かに小倉唯さんのことは嫌いだったけど、それを彼氏の前で言ったことはない。自分も同じオタクだから推しに真剣な気持ちもわかるので絶対に批判しなかったし「ライブ行かないで」などとも言っていない。
が、このツイートの動画を見て私は「おや?」と思う。
「ゆいちゃんの鶏肉ぅ~?」
— 🍒ぜろすま🚩 (@zerosuma) 2017年6月18日
「ゆいちゃんのもも肉~?」
「でもゆいちゃんはもーーっとすき♡」
上坂すみれがただの限界オタクな件 pic.twitter.com/VvQ82cVVNc
このツイートの主体は上坂すみれさんであるが、私は小倉唯さんの対応の意外性に驚いた。
私の中の「小倉唯」さんは「ゆいちゃんのもも肉~?」と来たら、「ゆいのもも肉はここだよ♡」と言いながらエプロンをめくって太ももを見せることでオタクを喜ばせるような存在であった。
しかし、動画で小倉唯さんは自分の太ももを見てしばし思案した後に「……ないわ。」と答えた。ここでエプロンをめくったらオタクが喜ぶのはわかっていたが、なんとなく嫌悪感を感じたのではないかと私は考える。
この動画をきっかけに私は「小倉唯ってアンドロイドじゃないのか?」と思い始めた。
で、次にこれ。
オタクから水瀬いのりさんのCDを借りyoutubeでStarry WishのMVを見ていたらvivid繋がりでおすすめで出てきて、上記ツイート以来小倉唯さんを考え直し始めていた私はなんとなく見てみた。
すると、なんでか知らんが小倉唯さんが殺陣で男を殴り蹴り倒してて「……いや何やっとんねん?オメ~は城の姫だけやってればいいんじゃないのか」と笑ってしまった。
思いのほかかっこいい(笑)MVが再生されたのがツボで私はそのままおすすめにあるこちらを見た。
これ。これである。これで完全に落ちた。
ピアノの音に合わせてワンフレーズ歌ってから本演奏に入るのがかっこ良すぎた。
もともと内田彩さんや山崎エリイさんのように「かわいい人が見せるかっこいい姿」にとことん弱いので完全に好きになってしまった。
そもそも俊龍先生も只野菜摘先生も大好きなのでこんな楽曲聴いたら軽率に優勝してしまう。iPodにSTRAWBERRY JAMが入ってた(前に研究目的にTSUTAYAで借りた)のでこれを見た日以来ずっとRaiseをリピートするようになった。
このRaiseを目にしてから私のツイッターは小倉唯さんで染まり始める。
どうしよう。Raiseのライブ映像見てから小倉唯さんが頭から離れない。助けてくれ
— みんり (@pnk_mgnd) 2017年7月1日
小倉唯さんのSNS全部フォローしたし、このままだと自分でチェリパス買いそうだしパシフィコも行ってやるみたいな気持ちになってるし私はどうしてしまったんだ…??
— みんり (@pnk_mgnd) 2017年7月4日
つい数日前まであんなに憎んでた女で胸がいっぱいになってしまい自分でも混乱している様子がよくわかる。
その過程で小倉唯オタクのフォロワーから「1stライブを見ないと始まらないしあれ見せて始まらなかった人間がいないレベルであれを見せた人間はやられましたよ」「“小倉唯”を始めましょう」と言われ、私は彼氏から1stライブの円盤を借りる約束をする。
正直彼氏と小倉唯さんのライブを見て彼氏が小倉唯さんに夢中になってたら殴り殺してしまう気がしたので、できれば円盤は一人で見るつもりだった。が、小倉唯さんを始めつつあった私はライブを早く見たくてたまらず、結局彼氏といっしょに見ることにした。
そして、HAPPY JAMからちょうど2年の今日。
殴り殺さないかヒヤヒヤしながら彼氏と『小倉唯1st LIVE「HAPPY JAM」』を見た。
…………完全に「小倉唯」を始めてしまった。
まず、本編ラストのSing-a-ling-a-Harmonyの
みんながいて わたしがいる そんな奇跡の中で
悩みながら今日も ちゃんと頑張れるの
で泣きそうになってる唯ちゃんを見て私まで泣きそうになってしまって……
唯ちゃんはどこか頑張り過ぎなところがあるように感じていて、例えば今年の母の日のブログでは
「昔は、小さい頃から
毎日毎日お稽古や塾、レッスンに通い詰めだったから、もっともっと遊びたかった。子どもらしくしたかったって思ったことも何度も何度もあったけど。。」
「強がりな私は、母にさえも
弱いところをあまり見せないようにって 普段から 気を張っちゃうところがあるんです。 心配かけないようにしなきゃって。」
なんて言っていて、この子いつ遊んだんだ…?誰に甘えて生きているんだ…??と心配になっていたのである。
だから、泣きながら「ちゃんと頑張れるの」なんて歌うもんだから私も軽率に泣いてしまった。「ちゃんと」頑張れるってなんだよ、頑張るにちゃんともクソもねえよ。
そしてアンコールでのMC。
「このライブは絶対に成功させなきゃいけない、っていう自分のなかのプレッシャーみたいなものもあって……」
「私はいつも『考え過ぎだよ』って言われるくらい変に真面目なところがあって、お仕事も頑張りたいし、学校も頑張りたいし、こうやってみんなとの素敵な時間も大事にしたくて、でも、それを全部叶えるにはほんとうにほんとうに自分が頑張らないとできないことだなって思って……」
「始めの頃は自分だけが頑張ってるような本当に自分ひとりだけの世界のなかで戦わなきゃいけないようなそんな苦しい気持ちになったりしたこともあったけど……」
「こんな私を……」
な~~んて言うからさあ!!もう!!!
私がどんなに憧れてなりたくてもなれなかった唯ちゃんがさ!コンプレックスまみれでさ!!なんで?!私に持ってないもの全部持ってるのになにをそれ以上求めるの?!なんでそんなに自分を追い詰めるの?!!私は唯ちゃんにめちゃくちゃ嫉妬してたから知ってるけど、唯ちゃんはめちゃくちゃ努力家で魅力いっぱいだよ!!!!!!と心の中で叫んでしまった。
そして最後に
「今まで頑張ってきた自分にも、やっと最近ちゃんと頑張れたなって思うようになって、でもまだまだこれからの部分もいっぱいあって、これからもちゃんと自分を見つめながら、自分を守りながら、これからも頑張りたいと思っています」
って……唯ちゃんが自分の努力を認められてて……うっ…よかったね唯ちゃん……唯ちゃんは充分頑張ってるよ………。
上記は抜粋だけどエモ過ぎてMC全部文字に書き起こしちゃったよ。
なんかね。小倉唯さん、あれだけ完璧でアンドロイドにさえ思えるかわいい女の子なのに、なんでこんなに自己肯定感が低くて自分を追い詰めがちなんだろう。めちゃくちゃ心配である。
私は小倉唯さんの「完璧」なところが嫌いだったので、そんな小倉唯さんも劣等感に苛まれるのかあって思ったらなんだか急に親近感が持ててほんとうに大好きになった。
小倉唯さんがもっと安らかに過ごせる世界になるといいなあ。
以上が小倉唯1st LIVE「HAPPY JAM」の感想。
彼氏が無言で『小倉唯1st LIVE TOUR「High-Touch☆Summer」』も差し出してきたのでそれも見た。また唯ちゃんが大きい会場を前に涙を流しててほんとうにこの子はいつも自分を追い詰めがちだなと心配になった。けど楽しそうでよかった。
彼氏と小倉唯さんを鑑賞したら彼氏を殴り殺してしまう気がしたが、そんなことはなかった。彼氏は存命である。
私が「幕張のRaiseを見て好きになった」と言ったら同意しながら嬉しそうにしてて、セトリを覚えてる彼はRaiseの前に必ずニヤニヤしてて、Raiseが来てブチ上がる私を見てまた嬉しそうに笑ってて、なんだかすごく平和な時間だった。今まで彼氏が唯ちゃんの話をするたびに笑顔で流しながらも内心ムカムカしてた自分が嘘のようだった。誰かと同じコンテンツをわかり合えるのは、とっても素敵なことだ。
小倉唯さんのライブを見て、私は小倉唯さんになれないし、ならなくて良いと感じた。当然のことであるが、私は今までそれに気づけなかった。
あれだけ完璧に思えた小倉唯さんだってコンプレックスに苛まれるんだし、きっと人間にはみんな自分では気づけない魅力があるのだ。
顔面も性格も学歴もFランな私だってきっと良いところがあるはずだ。
HAPPY JAMから2年も出遅れてしまったが、私は今日、“小倉唯”を始めた。
おわり。
(気づいたら日付超えてしまってた)
(彼氏はこれを目にしてしまった時は連絡ください)