日本人は“外国人就労”にどう向き合うべきか 『東京サラダボウル』が描く実習制度の実態

『東京サラダボウル』外国人技能実習の問題

「一度壊れた友情って、また戻ると思う?」
「戻るチャンスはあるんじゃないですか? 少なくとも今、この瞬間、同じ国で生きてるんですから」

 『東京サラダボウル』(NHK総合)第5話「ティエンと進」。これまでで最もサブタイトルが意味を持つ回であり、一見すると全然違う2つの名前の繋がりに胸を打たれた。

 介護施設で入居者のタブレットが盗まれ、ベトナム人ケアスタッフのティエン(Nguyen Truong Khang)が窃盗の容疑で東新宿署に連行されてくる。その取調中、ベトナム語通訳人の今井(武田玲奈)がティエンの体にあざを発見。施設で日常的に暴行を受けていた可能性もあるとみて、鴻田(奈緒)が事件を調べることになった。

 6年前に技能実習生としてベトナムから来日したティエン。技能実習生というワードは近年、よく耳にするが、実はよく分かっていないという人が多いのではないだろうか。

 外国人技能実習制度は、発展途上国の若者を技能実習生として日本の企業に受け入れ、そこで培った技術や知識を母国の経済発展に役立ててもらう国際貢献を目的としている。つまり帰国が前提なので、実習期間は最長でも5年。そのため、多くの実習生たちは「どうせ何年か帰ってしまうから」と高度な技術を教えてもらえず、末端の単純作業に回されてしまうことが多い。

 「今、関わることがあるベトナム人の多くは、それが被害者であれ、被疑者であれ、高い志を抱いて日本にやってきた人たちで、通訳をしていると『こんなことのために日本に来たんじゃないのに』って思いが伝わってくるんです」と肩を落とす今井。通訳人として話を聞くことはできても、それ以上は何もできない無力感が伝わってくる。

 また制度の理念を、「自分たちが受け入れてやっている」と解釈する日本人がいるのも事実だ。ティエンの同僚である別島(亀田佳明)がまさにそうだった。自分より格下だと思っているから、ティエンが歯向かってくることが許せないし、「ベトナム旧正月だから休暇がほしい」という当たり前の権利を求めただけで、身の程知らずだと思ってしまう。みんなが休んでいる日本の正月に、ティエンは文句一つ言わず出勤していたのに。

 2024年9月には、出入国在留管理庁が、2023年に職場から失踪した外国人技能実習生の数が過去最多の9,753人に達したことを発表した。制度の導入から30年以上が経った今も、多くの課題があり、技能実習生たちが賃金不払いや暴力、ハラスメントなどの人権侵害に遭うケースも後をたたない。

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