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「流石(さすが)」は土石流?

 TikTokで日本語を勉強中の米国人が漢字の体験談を披露した。彼は「流石」という語の意味を知らぬままに二つの漢字から類推して「石が流れる……これはの土石流の意味だな」と考えた。が、調べてみて違った。「予想どおりに」とか「期待に違わず」という意味だと知って驚いていた。
 字の音訓に「さ、す、が」がミリもかすってないのも不思議だが、ちょっと屈折した語源があるようだ。元になったのは「漱石枕流」という成句で、「石」と「流」を取って合わせた語だ。四文字成句の方は「石に口をすすぎ、流れに枕す」の意味になる。こりゃ、歯がボロボロになるし耳やら鼻やらから水が入って大変だ。ありえない! 
 本当は「石を枕にし、流れで口をすすぐ」と言いたかったナチュラリスト気取りの男(晋の人・孫楚)がつい言い間違えたのだ。それを友人に指摘されたが、意地っ張りで負けず嫌いな彼は、間違いを認めなかった。そこから流石に、「そうはいうものの」の意味も加わり「いやいや、流石に無理があるでしょう」となった。夏目房之介が「漱石」をペンネームにしたのは、この偏屈、意地っ張りを気取りたかったからだ。ちなみにたくさんのタレントたちに踊りを振り付ける南流石さんは「みなみ さすが」と読む。
 日々、日本語のアナーキーぶりを痛感している自分としては、語源の蘊蓄よりも、漢字と音訓が全然かすらない言葉の多さが手に負えないと感じている。ランダムに挙げてみよう(難読漢字ではないよ)。
 母衣(ほろ)、秋刀魚(さんま)、忍冬(すいかずら)、毬栗(いがぐり)、土竜(もぐら)、栗鼠(りす)、海豚(いるか)……まだあるがキリがない(笑)